詩人。本名暉造(てるぞう)。別号すゞしろのや。鳥取県八上(やかみ)郡曳田(ひけた)村(現鳥取市河原(かわはら)町)に生まれる。京都府立医学校に学ぶ。『少年園』『青年文』の投書家として詩文に頭角を現し、『文庫』にあっては『巌間(いわま)の白百合(しらゆり)』『夏日孔雀賦(くじゃくふ)』『海の声山の声』などの秀作を発表、漂泊の詩人として明治30年代の詩壇に重きをなした。1906年(明治39)その絶唱を厳選した唯一の詩集『孔雀船(ぶね)』を刊行。『文庫』派解体後、詩壇と絶縁した。医師として横浜、浜田(島根県)、台湾その他各地に転住。昭和期には『女性時代』『白鳥』への寄稿がある。昭和21年1月、疎開先の三重県度会(わたらい)郡七保村(現大紀(たいき)町)にて往診の途次、死去した。
[近藤信行]
『『伊良子清白全集』全2巻(2003・岩波書店)』▽『『伊良子清白蒐遺詩集』(2003・伊勢志摩文学館)』▽『日夏耿之介著『明治大正詩史 下』(1929・新潮社/改訂増補版・1949・創元社)』▽『日夏耿之介著『明治浪曼文学史』(1951・中央公論社)』▽『『明治文学全集59 伊良子清白他集』(1969・筑摩書房)』▽『平出隆著『伊良子清白』2冊(2003・新潮社)』
明治期の詩人,医師
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
明治期の詩人。鳥取県の生れ。本名暉造(てるぞう)。清白は一般に〈せいはく〉とも読まれているが,もともと筆名を〈すずしろのや〉と称し,後に清白と改めたもの。京都府立医学校卒。在学中から詩作し《文庫》の詩人として注目される。上京して医務のかたわら勉学と鏤骨(るこつ)の詩作に励み,詩集《孔雀船(くじやくぶね)》(1906)を刊行。200編から18編を自ら厳選しただけに繊細華麗な幻想の詩風は完成度が高く,自らに厳しい清白の芸術的態度をもたたえている。以後詩作を断ち,島根,大分,台湾等の病院に勤め,1922年三重県鳥羽港外の漁村に開業し,短歌に親しみ,第2次大戦後すぐ病没した。量より質の彼の詩業は明治の詩ばかりか日本の詩史上の一珠玉である。
執筆者:原 子朗
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