江戸時代初期の数学者。通称七兵衛、号は久庵。京都嵯峨(さが)の角倉(すみのくら)の一族で、角倉了以(りょうい)は光由の外祖父にあたる。光由は幼時から数学を好み、毛利重能(しげよし)について数学を学んだ。このころ、中国のそろばん書『算法統宗(さんぽうとうそう)』を入手、重能にこの書による教授を頼んだが、重能は十分読むことができなかった。そのため外伯父の角倉素庵(そあん)に教授を受け、これを理解した。
この『算法統宗』を手本にして著述したのが『塵劫記(じんごうき)』(1627)である。この書は光由の環境を反映して、内容は富裕な町人を対象としたものが多い。その名が高くなるにつれて諸大名から招かれたが、眼疾のために仕官はせず、一時、肥後(熊本県)の細川忠利(ただとし)の客分となったが、忠利死後は京都に戻った。晩年は盲目となり、素庵の子玄通の家に身を寄せた。著書に、『塵劫記』のほか、『和漢編年合運図』(釈円智の著に手を加えたもの。1645)、『古暦便覧』(1648)がある。
[大矢真一]
江戸初期の数学者。《塵劫記》(1627)の著者として名高い。幼名は与七,号を久庵という。豪商角倉(すみのくら)の一員で,一族の角倉素庵から中国の《算法統宗》を学び,これを手本として《塵劫記》を著作する。吉田は初め毛利重能に学ぶ。《塵劫記》の著者として広く知られ,細川忠利に招待され熊本に出かける。九州各地で指導したらしい。細川侯が没したのと眼病のため,郷里の京都嵯峨に帰る。晩年は失明し,一族の玄通に養われる。渋川春海によれば,光由は8尺のノーモンを立て,太陽の影を測り,冬至を調べたという。《塵劫記》は内容も挿絵もじょうずに編纂(へんさん)され,江戸時代を通してもっともよく読まれた本の一つである。光由の著書には,前記のほか《和漢編年合運図》(1645),《古暦便覧》(1648)がある。
執筆者:下平 和夫
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1598~1672.11.21
江戸前期の数学者。幼名与七,通称七兵衛,号は久菴。京都の豪商角倉の一族で,祖父宗運と角倉了以(りょうい)は従兄弟。はじめ毛利重能(しげよし)に学び,のち了以の子素庵(そあん)から中国の「算法統宗」を教科書として与えられ,これを研究して「塵劫(じんこう)記」(1627)を著した。多くの工夫がされ,同書は江戸時代の出版物に大きな影響を与えた。肥後国熊本藩細川氏に招かれ,九州各地で指導した。晩年は失明,角倉与一に養われた。著書「古暦便覧」「和漢編年合運図」。
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…日本にも江戸時代のはじめに伝わり,1675年(延宝3)に湯浅得之が復刻本を刊行した。これより以前,吉田光由は《算法統宗》を学び,これを範として〈そろばん〉の計算を中心とした《塵劫記(じんごうき)》(初版,1627)を刊行した。この書もまた庶民の間に流行し,多くの異版が出版された。…
…江戸初期の数学書。著者吉田光由(みつよし)は豪商角倉家の一員である。吉田は,中国の《算法統宗》を一族の角倉素庵から教わり,これを手本としてまとめたのが《塵劫記》(1627初版)である。…
…最古の数学パズル書と見られる,バシェ著の《愉快で楽しい問題》には多くの代数パズルがあり,その中には百五減算の原形である六十減算や油分け算も含まれている。百五減算は吉田光由の《塵劫記》下巻(1631),中根彦循の《勘者御伽双紙》上巻にも紹介されており,相手の年齢を当てるパズルである。今,相手の年齢を3,5,7で割ったときの余りを尋ね,その返事がa,b,cであったとする。…
…明治以前の日本人が研究した数学。研究者により,その初めを,(1)上古,(2)1627年(寛永4)刊の吉田光由著《塵劫記(じんごうき)》,(3)74年刊の関孝和著《発微算法(はつびさんぽう)》とする3通りがある。
[奈良・平安時代]
養老令(718)によれば,官吏養成のための学校である大学寮を設置し,現在の中学生くらいの少年がここで勉強した。…
※「吉田光由」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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