国柱会(読み)こくちゅうかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「国柱会」の意味・わかりやすい解説

国柱会
こくちゅうかい

日蓮(にちれん)主義による在家(ざいけ)仏教教団。1880年(明治13)に田中智学(ちがく)が横浜に組織した蓮華(れんげ)会に端を発し、1884年結成した立正安国(りっしょうあんこく)会を経て、1914年(大正3)、組織を全国的に統一、静岡県三保(みほ)に最勝閣(さいしょうかく)正境宝殿を建立して本拠とし、国柱会が創始された。名称は、日蓮の著『開目抄』にある「われ日本(にほん)の柱とならん」に由来する。創始以来、『妙宗(みょうしゅう)』『天業民報(てんぎょうみんぽう)』『大日本(だいにほん)』など機関紙を発行し、文筆による伝道活動を活発に行ったが、その主張は、日蓮聖人を末法における人類救済のために必要不可欠な唯一者として仰ぎ、『法華経(ほけきょう)』を信行(しんぎょう)、日本国体を開顕(かいけん)し、立正安国の真世界を目ざすことにあり、在家仏教の立場から仏教改革を提唱、実践している。1928年(昭和3)には、東京・江戸川一之江に妙宗大霊廟(みょうしゅうだいれいびょう)を建立して本部(申孝園(しんこうえん))を置くに至ったが、この間、山川智応(ちおう)(1879―1956)、伊勢丹(いせたん)創業者の初代小菅丹治(こすげたんじ)(1859―1916)らも内外から教勢の発展に努めた。著名な会員に石原莞爾(いしはらかんじ)、宮沢賢治らがいる。第二次世界大戦後も、機関紙による文書伝道の伝統を守って運動を展開している。支局数59、教師数49、信者数1万8974(『宗教年鑑』平成26年版)。

[中平千三郎]

『田中香浦著『日蓮主義の研究』(1981・真世界社)』『田中香浦著『日蓮聖人の宗教』(1979・真世界社)』『田中香浦著『これからの世界・人間』(1978・真世界社)』『国柱会教務部編『国柱会百年史』(1984・真世界社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「国柱会」の意味・わかりやすい解説

国柱会 (こくちゅうかい)

東京都江戸川区に事務所を置く仏教日蓮系の宗教団体。創設者田中智学(1861-1939)は,江戸日本橋の医者の子として生まれたが,10歳の年に父を失い日蓮宗の寺で出家得度した。日蓮の思想に学ぶうちに,個人の心の救済よりも社会環境の浄化を重視するようになり,宗門のあり方に疑問を感じて,19歳で還俗し,1880年在家仏教の運動のために蓮華会を創立,85年蓮華会は立正安国会に発展した。日蓮主義にもとづく国家建設の主張は各地にひろまり,1914年立正安国会を中心に,門下の信仰団体を統一して国柱会が創設された。田中は高弟山川智応らとともに文筆,講演など多彩な活動を展開し,石原莞爾,宮沢賢治らが入会,会員は急速に増加した。その後田中は政治的な運動に傾き,国柱会も日蓮主義と〈国体主義〉を唱える国家主義的な運動に傾いた。田中の死後,長男田中車一郎が中心となり現在に至っている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国柱会」の意味・わかりやすい解説

国柱会
こくちゅうかい

日蓮系の新宗教。日蓮宗僧籍を有していた田中智学 (1861~1939) が在家仏教を唱道し,僧籍を離脱して横浜に蓮華会を創設した (1880) のが始り。 1884年に立正安国会,さらに 1914年に国柱会と改称。『法華経』を教典とし,佐渡始顕妙曼荼羅を本尊とする。聖祖 (日蓮) に帰れ,祖廟に集れと,宗門統一,祖道復古を主張した智学の教えを踏襲し,強い日蓮主義をその特徴とする。本部は東京都江戸川区一之江。機関誌には『日蓮主義』『真世界』 (ともに月刊) がある。

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世界大百科事典(旧版)内の国柱会の言及

【田中智学】より

…10歳のとき日蓮宗の僧について得度したが,当時の日蓮宗檀林の天台教学中心の学風と教団の摂受(しようじゆ)的傾向にあきたらず,1879年脱宗還俗した。翌80年横浜に蓮華会をおこして在家仏教運動を開始,85年には東京に移り立正安国会を,さらに1914年には国柱会を創立した。主として講演と著述による折伏(しやくぶく)中心の活動を展開,その著《宗門之維新》《本化摂折論》は当時の日蓮系の僧俗に影響を与えた。…

※「国柱会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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