土壌の名前には褐色土,赤黄色土,黒ボク土など,伝統的に土の色に由来するものが多い。有名なチェルノーゼムもロシア語で黒土を意味する。それは土色が目につきやすい性質であるからだけでなく,付随する物理,化学,生物学的諸特性などを象徴しているからである。土の色を支配している大きな要因の一つは,遊離の鉄の量と存在形態である。たとえば土壌の褐色味は針鉄鉱αFeO(OH)またはその前駆物質に,赤色味は赤鉄鉱αFe2O3またはその前駆物質に由来する。また過湿な還元条件下では遊離鉄は2価Fe(Ⅱ)に荷電を変え,そのため土の色は灰色~青灰色になる。一方遊離鉄が量的に多いほど色は濃く,少ないほど淡い。土色を支配しているもう一つの大きな要因は土壌有機物で,土壌表層部に暗色~黒色味をつける。とくに日本の黒ボク土表層の有機物含量は平均十数%で他に類をみないほど高く,その黒さも欧米で黒土の代表格のチェルノーゼムよりずっと黒い。有機物が黒くなるのは,土壌中で腐植化とよばれる変化が進み,土壌に固有の腐植物質が形成されるからである。鉄と有機物で支配される土色を修飾的に変化させているものにマンガン酸化物があり,土壌に暗色味をつけ加えることがある。玄武岩や蛇紋岩などの塩基性岩石はマンガンが多いので,その風化物はふつう暗褐~暗赤色である。一方,世界の乾燥~半乾燥地帯で,土壌中に多量の炭酸カルシウムが集積する場合,土壌はそれによって白色味を帯びる。土色の表示はマンセル表色法(〈色〉の項目を参照)がふつう用いられ,10YR4/6のように表す。これは色相(上記の場合10YR),明度(同4),彩度(同6)の3要素で色を表示するもので,色相は赤(R),黄(Y),緑(G)などの色の種類,明度は明るさ,彩度は色の鮮やかさを表す。
→土壌型
執筆者:三土 正則
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…伊原昭《万葉の色相》は,万葉集に〈いろ〉とよまれている用語例を調査して,用例を系統別にみると赤系統が54例であるのに対して,黄系統は1例にすぎないと述べている。その唯一例とは,〈白細砂(しらまなご)三津の黄土(はにふ)の色にいでて云はなくのみぞわが恋ふらくは〉(巻十一)の黄土色をさす。三津は難波津で,黄土色は顔料である土にちなむ命名であることが,はっきり知られる(ついでに付言すると,万葉に多い黄葉(もみじ)は赤系統に入れられている)。…
※「土色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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