寺門静軒(読み)テラカドセイケン

精選版 日本国語大辞典 「寺門静軒」の意味・読み・例文・類語

てらかど‐せいけん【寺門静軒】

  1. 江戸後期の漢学者。名は良、字は子温。通称彌五左衛門。常陸国(茨城県)水戸の人。山本緑陰師事、ついで上野寛永寺の勧学寮で仏典を学ぶ。江戸で私塾を開いたが、天保年間(一八三〇‐四四)に戯文「江戸繁昌記」を書いて無用者意識と諷世の姿勢を示し、「敗俗之書」と目され、処分を受けた。剃髪して上州・武州越後を放浪生活の後、越後国で「新潟繁昌記」を著わし、晩年は武州妻沼に両宜塾を開いた。寛政八~明治元年一七九六‐一八六八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「寺門静軒」の意味・わかりやすい解説

寺門静軒
てらかどせいけん
(1796―1868)

江戸末期の漢学者。名は良。字(あざな)は士温。通称弥五左衛門。江戸の人。山本緑陰に師事。天保(てんぽう)年間(1830~44)に著した『江戸繁昌記(はんじょうき)』(正編五冊、後編三冊)では、「無用之人」と自称し、その目を通して幕末江戸の世相を戯体の漢文で活写した。この作は大いに評判となったが、そこに込められた風刺の鋭さゆえに天保の改革の当事者の忌諱(きい)に触れ筆禍を招いた。結果は武家奉公御構(おかまい)(禁止)となり、以後諸国を流浪。1859年(安政6)には『新潟繁昌記』を書き下した。幕末・明治の文壇に現れた一群の繁昌記ものは彼を祖とする。ほかに『静軒一家言』『静軒詩鈔(しょう)』『静軒文鈔』などの著作がある。慶応(けいおう)4年2月24日没。

[中野三敏]

『永井啓夫著『寺門静軒』(1966・青蛙房)』


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改訂新版 世界大百科事典 「寺門静軒」の意味・わかりやすい解説

寺門静軒 (てらかどせいけん)
生没年:1796-1868(寛政8-明治1)

幕末期の儒者。名は良,字は子温,通称弥五左衛門。号は静軒のほか,克己,蓮湖など。水戸藩士の子として江戸に生まれ,山本緑陰に入門し,駒込,谷中,浅草新堀端などに開塾して,水戸藩仕官をはかったが成功せず,以後上州,野州,越後などに旅行,講義をして生活し,みずから〈無用之人〉と称し世間を皮肉の目で観じ,戯著《江戸繁昌記》などを板行して筆禍をこうむったが,後世に与えた文学上の影響は少なくない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寺門静軒」の意味・わかりやすい解説

寺門静軒
てらかどせいけん

[生]寛政8(1796).江戸
[没]慶応4(1868).2.24. 武蔵
江戸時代後期の文人。名,良。字,子温。通称,弥五左衛門。別号,克己,蓮湖。父は水戸藩士。母方の祖父母に育てられ,江戸両国で過した。のち山本緑陰から漢学を学び,文政9 (1826) 年谷中に克己塾を開いた。天保3 (32) 年漢文体で江戸の風物を綴った『江戸繁昌記』初編を刊行,以後「青楼之巻」 (41) まで6巻を出版したが,世相を風刺したこの書はたびたび筆禍を招いた。上州,越後,武州,上方などを旅行あるいは放浪して各地の文人,儒者らと交わり,無用の人としての立場を貫いた。ほかに『太平志』 (34) ,『新潟繁昌記』 (59) など。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「寺門静軒」の解説

寺門静軒 てらかど-せいけん

1796-1868 江戸時代後期の儒者。
寛政8年生まれ。山本緑陰(りょくいん)に師事。天保(てんぽう)2年から執筆した「江戸繁昌(はんじょう)記」が「敗俗之書」とされ,武家奉公御構(おかまい)(禁止)の処分をうけた。のち各地を旅し,万延元年武蔵(むさし)妻沼(めぬま)(埼玉県)に郷学両宜塾をひらいた。慶応4年3月24日死去。73歳。江戸出身。名は良。字(あざな)は子温。通称は弥五左衛門。

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世界大百科事典(旧版)内の寺門静軒の言及

【江戸繁昌記】より

…江戸末期の江戸市中の繁栄ぶりを狂体漢文で叙した風俗書。著者は寺門(てらかど)静軒(良)。1832‐36年(天保3‐7)刊。…

※「寺門静軒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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