心療内科(読み)しんりょうないか

精選版 日本国語大辞典 「心療内科」の意味・読み・例文・類語

しんりょう‐ないか シンレウナイクヮ【心療内科】

〘名〙 身体疾患を身体と心との両面からとらえ、患者の置かれている環境との関連などを明らかにして、治療していこうという臨床医学の一分科。からだの病気のうち、特に心理的な色彩の強い心身症を治療対象とする。〔人間改造の医学(1965)〕

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デジタル大辞泉 「心療内科」の意味・読み・例文・類語

しんりょう‐ないか〔シンレウナイクワ〕【心療内科】

精神身体医学の立場から病気を内科的に診断・治療する、臨床医学の分野。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「心療内科」の意味・わかりやすい解説

心療内科
しんりょうないか

身体症状を中心とする神経症や心身症をおもな対象とする診療科名で、心身医学的な診療および研究が行われている。これは一般の内科的治療ばかりでなく、積極的に心理療法精神療法)も行う内科という意味で、最初に標榜(ひょうぼう)したのは九州大学医学部である。すなわち、1952年(昭和27)にアメリカへ留学した池見酉次郎(いけみゆうじろう)(1915―99)は心身医学的治療の実際をみてその重要性を痛感し、これを学んで帰朝、1963年6月から精神身体医学(心身医学)の臨床講座を開き、すでに東京大学医学部で標榜していた物療内科理学診療科)に対比させる意図もあって心療内科を設置、初代教授に就任した。

 心療内科では、医師の助力的立場で診療の実技を行うパラメディカルparamedical(臨床心理士、ソーシャル・ケースワーカー、作業療法士など)の人々が、それぞれ専門的な立場から医師に協力し、有機的なチームワークのもとに診療を行っている。現在では、臨床各科の疾患一般についても広く心身両面からの総合医学的立場から診療が行われるようになってきた。

[下坂幸三]

『池見酉次郎著『心療内科』『続・心療内科』(中公新書)』

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改訂新版 世界大百科事典 「心療内科」の意味・わかりやすい解説

心療内科 (しんりょうないか)

内科的な症状を呈する心身症を対象とする診療科目。つまり,高血圧症,狭心症などの循環器系,気管支喘息(ぜんそく)や過呼吸症候群などの呼吸器系,胃潰瘍,過敏性大腸症候群,糖尿病などの消化器系,片頭痛などの神経系疾患のうち,その病態形成に心理的因子が関与している例について,身体面のほか,とくにその心理面を重視して治療を行う。
精神医学
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百科事典マイペディア 「心療内科」の意味・わかりやすい解説

心療内科【しんりょうないか】

精神身体医学を基礎とした,心身両面から近接した全人的医療。1961年,九州大学医学部で研究施設が創設され,1963年診療科として開設された。その後,全国の大学医学部に設けられている。当初は主として内科的疾患に対して心理社会的因子を重視した診療を行ったが,現在では臨床各科にわたるすべての疾患,たとえば外科手術前後や集中治療施設における患者の心身医学的問題の解決,末期患者への対応,さらには医療スタッフ間のチームワークに対しても,研究・教育・実践の各部門に領域を広げている。
→関連項目標榜診療科

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知恵蔵mini 「心療内科」の解説

心療内科

心理・社会面を含め身体を総合的に捉える「心身医療」を行っている診療科。心身症やストレス由来の身体症状、または肉体的要因が元となっている精神症状を扱う。1996年、政令により「心療内科」という診療科名の外部標榜が認められた。しかし、厳密に上記の意味で心療内科を設けているところは少なく、一般に心療内科を標榜している中小の医療機関はほとんど精神科を兼ねており、各種神経症をはじめ、うつ病、不眠症、統合失調症など幅広く精神疾患を扱う。日本全国で心療内科を標榜する医療施設は増加傾向にあり、厚生労働省によると2008年10月1日現在、3775となっている。

(2013-7-18)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「心療内科」の意味・わかりやすい解説

心療内科
しんりょうないか

精神身体医学の応用部門として,九州大学医学部に池見酉次郎教授が 1963年6月に新設した内科。心理療法内科の略。精神療法を主として心身症を治療するが,原則として個室内で医師と患者が一対一で面接することが特徴である。神経内科,心身症センターなどの名称で,各大学も類似の部門をつくっている。

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世界大百科事典(旧版)内の心療内科の言及

【心身医学】より

…また,身体的原因によって発生した疾患であっても,その経過に心理的因子が重要な役割を演ずる例,身体症状を主症状とする神経症,あるいは鬱病の一部を対象とする場合もある。心身医学の対象となる症例は各科にまたがっているが,内科的な症状を対象とする臨床的な場を心療内科という。治療は心身両面から行われ,身体的因子が重視される場合には身体的治療に,心理的因子が重視される場合には精神療法に重点がおかれ,精神安定剤の用いられることも多い。…

【心身症】より

… 心身症の身体症状は臨床各科の領域にわたるので,治療は対象各科で行われる。近年,日本で心療内科を標榜して,心身医学的治療を専門に行う医師もいる。実際の治療は心身両面から行われるのが原則で,病変部位への身体医学的処置(たとえば潰瘍治療剤などの投与)と心理療法を行う。…

※「心療内科」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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