映画監督、シナリオ作家。明治45年4月22日、広島県佐伯(さえき)郡石内村(現、広島市佐伯区五日市(いつかいち)町石内)に生まれる。1934年(昭和9)に京都の新興キネマの現像場に入り、情報局のシナリオ募集に入選してシナリオ作家になる。1947年(昭和22)に『安城家の舞踏会』を書いてから活躍を始めた。1950年に製作の自主性を求めて独立プロ近代映画協会を設立。『愛妻物語』(1951)で監督デビューした。1952年に原爆の被害を本格的に描いた最初の劇映画である『原爆の子』を脚本監督で発表した。独立プロの経営の苦しさのため超低予算でつくった『裸の島』が、1960年のモスクワ映画祭でグランプリを得て世界的に売れた。『縮図』(1953)、『母』(1963)、『裸の十九才』(1970)、『竹山ひとり旅』(1977)、そして98歳でつくった『一枚のハガキ』(2010)など。農民や社会の下層で生きる人々を描いた作品と原爆を告発する作品に優れたものが多い。
練達の職人的技術でシナリオは多様なジャンルを書き分けたが、自分の監督作品では、自分を支えてくれた家族や仕事の同僚に対する感謝、軍隊経験への怒り、自分の出自としての農業への愛惜と憂い、郷里広島を通じての原爆への怒り、老いと性など、自分を軸とした家族、職業、地域、国家から世界に至る問題を総合的に描くことのできた、世界に類のない映画作家であった。平成24年5月29日、100歳で亡くなった。2002年(平成14)、文化勲章受章。
[佐藤忠男]
●監督
愛妻物語(1951)
雪崩(1952)
原爆の子(1952)
縮図(1953)
女の一生(1953)
どぶ(1954)
狼(1955)
銀心中(1956)
流離の岸(1956)
女優(1956)
海の野郎ども(1957)
悲しみは女だけに(1958)
第五福竜丸(1959)
花嫁さんは世界一(1959)
らくがき黒板(1959)
裸の島(1960)
人間(1962)
母(1963)
鬼婆(1964)
悪党(1965)
本能(1966)
尖石遺跡(1966)
蓼科の四季(1966)
性の起原(1967)
薮の中の黒猫(1968)
強虫女と弱虫男(1968)
かげろう(1969)
触角(1970)
裸の十九才(1970)
鉄輪(かなわ)(1972)
讃歌(1972)
心(1973)
わが道(1974)
ある映画監督の生涯 溝口健二の記録(1975)
竹山ひとり旅(1977)
絞殺(1979)
三本足のアロー(1980)
北斎漫画(1981)
地平線(1984)
ブラックボード(1986)
落葉樹(1986)
さくら隊散る(1988)
濹東綺譚(ぼくとうきだん)(1992)
午後の遺言状(1995)
生きたい(1999)
三文役者(2000)
ふくろう(2003)
石内尋常高等小学校 花は散れども(2008)
一枚のハガキ(2010)
●脚本
南進女性(1940)
汪桃蘭の嘆き(1940)
春星夫人(1941)
猛獣使ひの姉妹(1941)
鍵を握る女(1946)
お光の縁談(1946)
待ちぼうけの女(1946)
女性の勝利(1946)
仮面の街(1947)
処女は真珠の如く(1947)
娘の逆襲(1947)
誘惑(1948)
四人目の淑女(1948)
偉大なるX(1948)
火の薔薇(1948)
噂の男(1948)
幸福の限界(1948)
森の石松(1949)
朱唇いまだ消えず(1949)
四谷怪談(1949)
大都会の顔(1949)
真昼の円舞曲(1949)
殺人鬼(1949)
脱線情熱娘(1949)
お嬢さん乾杯!(1949)
わが恋は燃えぬ(1949)
嫉妬(1949)
春雪(1950)
赤城から来た男(1950)
春の潮(1950)
処女峰(1950)
野性(1950)
七色の花(1950)
戦火の果て(1950)
暁の追跡(1950)
長崎の鐘(1950)
偽れる盛装(1951)
十六夜街道(1951)
東京悲歌(1951)
源氏物語(1951)
愛妻物語(1951)
舞姫(1951)
西城家の饗宴(1951)
情炎の波止場(1951)
上州鴉(1951)
誰が私を裁くのか(1951)
自由学校(1951)
熱砂の白蘭(1951)
阿修羅判官(1951)
原爆の子(1952)
暴力(1952)
西陣の姉妹(1952)
雪崩(1952)
女の一生(1953)
慾望(1953)
縮図(1953)
村八分(1953)
女ひとり大地を行く(1953)
千羽鶴(1953)
若い人たち(1954)
泥だらけの青春(1954)
どぶ(1954)
母なき子(1955)
美女と怪龍(1955)
姉妹(1955)
愛すればこそ(1955)
狼(1955)
十九の花嫁(1955)
銀座の女(1955)
のんき夫婦(1956)
病妻物語 あやに愛しき(1956)
狙われた男(1956)
嫁ぐ日(1956)
うなぎとり(1957)
海の野郎ども(1957)
殺したのは誰だ(1957)
多情佛心(1957)
悲しみは女だけに(1958)
夜の鼓(1958)
一粒の麦(1958)
不敵な男(1958)
真夜中の顔(1958)
夜の素顔(1958)
花嫁さんは世界一(1959)
電話は夕方に鳴る(1959)
その壁を砕け(1959)
第五福竜丸(1959)
大いなる驀進(1960)
素敵な野郎(1960)
国定忠治(1960)
大いなる旅路(1960)
裸の島(1960)
松川事件(1961)
しとやかな獣(1962)
当りや大将(1962)
地獄の刺客(1962)
あの空の果てに星はまたたく(1962)
母(1963)
舞妓と暗殺者(1963)
嘘(1963)
肉体の盛装(1964)
鬼婆(1964)
駿河遊侠伝 賭場荒し(1964)
続・酔いどれ博士(1966)
本能(1966)
酔いどれ博士(1966)
酔いどれ波止場(1966)
性の起原(1967)
強虫女と弱虫男(1968)
薮の中の黒猫(1968)
かげろう(1969)
裸の十九才(1970)
触角(1970)
闇の中の魑魅魍魎(ちみもうりょう)(1971)
激動の昭和史 沖縄決戦(1971)
甘い秘密(1971)
軍旗はためく下に(1972)
混血児リカ(1972)
讃歌(1972)
鉄輪(1972)
心(1973)
混血児リカ ひとりゆくさすらい旅(1973)
混血児リカ ハマぐれ子守唄(1973)
わが道(1974)
ある映画監督の生涯 溝口健二の記録(1975)
昭和枯れすすき(1975)
竹山ひとり旅(1977)
事件(1978)
危険な関係(1978)
絞殺(1979)
配達されない三通の手紙(1979)
地震列島(1980)
遥かなる走路(1980)
北斎漫画(1981)
積木くずし(1983)
地平線(1984)
白い町ヒロシマ(1985)
落葉樹(1986)
ブラックボード(1986)
映画女優(1987)
ハチ公物語(1987)
ドンマイ(1990)
東京交差点(1991)
遠き落日(1992)
午後の遺言状(1995)
宮澤賢治 その愛(1996)
生きたい(1999)
おもちゃ(1999)
三文役者(2000)
大河の一滴(2001)
陸に上った軍艦(2007)
石内尋常高等小学校 花は散れども(2008)
天皇の世紀(2010)
一枚のハガキ(2011)
●脚色
北極光(1941)
安城家の舞踏會(1947)
結婚(1947)
わが生涯のかゞやける日(1948)
夜明け前(1953)
地の果てまで(1953)
君に捧げし命なりせば(1953)
足摺岬(1954)
銀心中(1956)
赤穂浪士 天の巻・地の巻(1956)
流離の岸(1956)
四十八歳の抵抗(1956)
女優(1956)
地上(1957)
美徳のよろめき(1957)
ひかげの娘(こ)(1957)
倖せは俺等のねがい(1957)
裸の太陽(1958)
禁じられた唇(1958)
氷壁(1958)
からたち日記(1959)
貴族の階段(1959)
才女気質(1959)
路傍の石(1960)
女の坂(1960)
がんばれ!盤嶽(1960)
「挑戦」より 愛と炎と(1961)
女の勲章(1961)
背徳のメス(1961)
熱愛者(1961)
雲がちぎれる時(1961)
献身(1961)
胎動期 私たちは天使じゃない(1961)
爛(ただれ)(1962)
斬る(1962)
鯨神(くじらがみ)(1962)
人間(1962)
裁かれる越前守(1962)
家庭の事情(1962)
青べか物語(1962)
黒蜥蜴(1962)
海軍(1963)
沙羅の門(1964)
卍(まんじ)(1964)
沙羅の門(1964)
傷だらけの山河(1964)
悪党(1965)
清作の妻(1965)
鼠小僧次郎吉(1965)
刺青(1966)
座頭市海を渡る(1966)
けんかえれじい(1966)
限りある日を愛に生きて(1967)
妻二人(1967)
堕落する女(1967)
華岡青洲の妻(1967)
眠れる美女(1968)
鬼の棲む館(1969)
千羽鶴(1969)
さくら隊散る(1988)
濹東綺譚(1992)
ユキエ(1998)
完全なる飼育(1999)
ふくろう(2004)
『新藤兼人著『新藤兼人の足跡』全6巻(1993~1994・岩波書店)』▽『新藤兼人著『新藤兼人・原爆を撮る』(2005・新日本出版社)』▽『新藤兼人著『作劇術』(2006・岩波書店)』▽『新藤兼人著『シナリオの構成』(2007・雷鳥社)』▽『新藤兼人著『生きているかぎり――私の履歴書』(2008・日本経済新聞出版社)』▽『新藤兼人著『遺言シナリオ集』(2011・岩波書店)』▽『新藤兼人著『シナリオ人生』(岩波新書)』▽『新藤兼人著『愛妻記』(文春文庫)』
(菘(すずな)あつこ フリーランス・ライター / 2012年)
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…現代日本の映画作家として特異な位置を占める鈴木清順(1923‐ )の代表作の一つで,1966年の日活映画。鈴木隆の同名小説を原作に新藤兼人が脚本を書いた。いわゆる戦前(第2次世界大戦以前)を時代背景に,硬派中学生・南部麒六の青春遍歴がつづられる。…
…戦前にも独立プロはあったが,この戦後の独立プロ・ブームの特徴は左翼独立プロを中心とするところにあった。 これらの独立プロから山本薩夫《箱根風雲録》《真空地帯》(ともに1952),《太陽のない街》《日の果て》(ともに1954),《浮草日記》(1955),《台風騒動記》(1956),亀井文夫《母なれば女なれば》(1952),《女ひとり大地を行く》(1953),家城(いえき)巳代治《雲ながるる果てに》(1953),《ともしび》(1954),《姉妹》(1955),《こぶしの花の咲く頃》(1956),《異母兄弟》(1957),今井正《山びこ学校》(1952),《にごりえ》(1953),《ここに泉あり》(1955),《真昼の暗黒》(1956),新藤兼人《原爆の子》(1952),《女の一生》(1953),《どぶ》(1954),吉村公三郎《夜明け前》(1953),《足摺岬》(1954),五所平之助《朝の波紋》(1952),《煙突の見える場所》(1953),今泉善珠《村八分》(1953),山村聡《蟹工船》(1953),それに日教組製作の《ひろしま》(1953。関川秀雄監督)といった作品も生まれた。…
※「新藤兼人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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