明治・大正期の小説家
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小説家。大阪堺の生れ。本名信(まこと)。別号ちぬの浦浪六。早く父を失い,母の手で育てられた。少年時代よりさまざまな境遇に転変の生活を送ったが,1890年《郵便報知新聞》に入社,翌91年同紙の日曜付録〈報知叢話〉に《三日月》を発表,主人公の男だて三日月次郎吉の痛快な活躍ぶりが読者に喜ばれ,幸田露伴の作かとまでもてはやされた。その後,朝日新聞社の専属作家となり,多くの任俠小説を書き,明治20年代の〈撥鬢(ばちびん)小説〉の大家と仰がれた。〈撥鬢〉とは江戸中期の町奴(まちやつこ)の髪形からの命名である。他方,《当世五人男》(1896)や《八軒長屋》(1906-08)などの現代小説もある。晩年は創作より各種事業にむしろ熱意を注いだ。東京下谷の自宅で死去。
執筆者:岡 保生
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小説家。大阪府堺(さかい)に生まれる。本名信(まこと)。別号ちぬの浦浪六、眠獅庵(みんしあん)主人。1890年(明治23)『報知新聞』の校正係となり、翌年森田思軒(しけん)編集長の勧めで処女作『三日月』を発表、好評を博す。『奴(やっこ)の小万(こまん)』(1892)、『後の三日月』(1894)、『侠客神髄妙法院勘八(みょうほういんかんぱち)』(1926)などは、町奴の男達(おとこだて)「侠」をモチーフとし、いわゆる「撥鬢(ばちびん)小説」とよばれた。また、純粋な激情をもって権力に立ち向かい、意地を貫いて死んでゆく『破太鼓(やれだいこ)』(1892)や、木賃宿の生活を描いた『八軒長屋』全三巻(1906~08)などが注目される。
[山崎一穎]
『『明治文学全集89 明治歴史文学集(1)』(1975・筑摩書房)』▽『木村毅著『明治文学夜話近代精神と文壇』(1975・至文堂)』
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