梁上の君子(読み)リョウジョウノクンシ

デジタル大辞泉 「梁上の君子」の意味・読み・例文・類語

梁上りょうじょう君子くんし

《「後漢書陳寔ちんしょく伝から。陳寔はりの上に忍び込んでいる盗賊を見つけて、悪い習慣が身につくとあの梁の上の君子のようになるのだと子供たちを戒めたという故事による》
盗賊。どろぼう。
ネズミ異称

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精選版 日本国語大辞典 「梁上の君子」の意味・読み・例文・類語

りょうじょう【梁上】 の 君子(くんし)

① (「後漢書‐陳寔伝」の「有盗夜入其室、止梁上、寔陰見、乃起自整払、呼命子孫、正色訓之曰、夫人不自勉、不善之人未必本悪、習以性成、遂至於此、梁上君子者是矣、盗大驚、自投於地、稽顙帰罪」による) 盗賊。ぬすびと。梁上公
読本・南総里見八犬伝(1814‐42)八「人の家にも窃(しのび)入つつ梁上(リャウショウ)の君子となる夜の多かりしに」
② 鼠(ねずみ)をいう。

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故事成語を知る辞典 「梁上の君子」の解説

梁上の君子

泥棒。また、転じてネズミをいう。

[使用例] 人間だか動物だか分らない先に君子と称するのははなはだ早計のようではあるが大抵君子で間違はない。梁上の君子などと云って泥棒さえ君子とう世の中である[夏目漱石吾輩は猫である|1905~06]

[使用例] 盗児をさして梁上の君子とよんだ文化人は欧羅巴ヨーロッパにも見あたらないようだ[吉川英治*人間山水図巻|1947]

[由来] 「後漢書ちんしょく伝」に出て来る話から。二世紀の中国、かん王朝の時代に、公正さで知られた陳寔という人物がいました。ある年、凶作で人々が切り詰めた暮らしをしているとき、彼の家に泥棒が入り、天井の棟木の上に隠れていました。それに気づいた陳寔は、知らんぷりをし、子どもたちを集めて説教を始めます。「人間、日ごろの修練が大切だ。悪人だって、もとから悪い人だったわけではない。悪い習慣が重なって、そうなってしまうのだ」と語ったところで、いきなり「梁上の君子はこれなり(今、棟木の上にいらっしゃる先生が、いい例だ)」と言ったものですから、泥棒はびっくり仰天。棟木から降りてきて、土下座したのでした。陳寔は、生活の苦しさから盗みに及んだという事情を考えて、この泥棒にものを与えて帰したところ、近辺からは盗賊がいなくなったということです。

[解説] ❶そしらぬ顔で子どもたちに説教を始める陳寔は、なかなかの役者。泥棒を「君子」と呼ぶのも、ユーモアがあります。きっと、人情機微に通じた度量の広い人物だったのでしょう。❷このことばをネズミに転用したのは、こそ泥のことを「頭の黒いネズミ」と呼ぶところから。こちらには、日本人のユーモア感覚が発揮されています。

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