イスラエルの死海北西岸にある洞窟(どうくつ)群に隠されていた古文書の巻物。同所の孤立した台地上にある古代遺跡キルベト・クムランの住人たち(ユダヤ教の一分派エッセネ派の宗団と思われる)が製作したものなので、クムラン文書ともよばれる。1947年に7巻の羊皮紙巻物が洞窟内から発見されたのが最初で、その後の捜査でも銅板巻物を含む多くの文書が出土し、主要なものはエルサレムのイスラエル博物館の「聖書館」に収蔵展示されている。これらの巻物は元来、蓋(ふた)付き円筒形土器に収められ、羊皮紙やパピルスの場合はインクで書かれ、銅板には字が彫り付けられた。言語はヘブライ語楷書(かいしょ)が主で、ほかにアラム語も用いられている。年代は紀元前2世紀から前40年にわたるが、そこには「エステル記」を除く『旧約聖書』の最古の写本がみられる。また、クムラン教団の戒律、思想、聖書解釈を記した巻もある。
[小川英雄]
『M・ブラック著、新見宏訳『死海写本とキリスト教の起源』(1966・山本書店)』
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1947年のベドウィンの一少年による発見をきっかけとして,死海の北西岸から発見された文書群。クムランおよびムラバートの洞穴,ミルド廃墟よりの文書を総称する。最も重要なのはクムラン発見の文書で,旧約聖書「イザヤ書」の最古の写本,聖書注解,感謝の詩編,黙示文学,外典,教団宗規成律などを含み,前2~後1世紀の間存在した,おそらくエッセネ派に属するクムラン教団の文書と推定される。ムラバートからは第2次ユダヤ戦争の首領バル・コクバの手紙が発見された。死海文書の発見は旧約聖書,ヘブライ語,ユダヤ教および原始キリスト教の研究に大きな光を与えつつある。
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