河床や海岸で,硬い岩石の露出している場合に岩盤の表面に生じるほぼ円形の穴。かめ穴,大釜,ポットホールともいう。穴の大きさや深さは大小さまざまで,数cmから数mに及ぶものまである。穴の中には丸くなった石が入っていることが多い。岩盤の表面に節理や割れ目があると流水や波の浸食がその弱い部分に集中して,周囲よりも早く削られてくぼみを生ずる。このくぼみに石が入りこむと,流水や波の渦といっしょになって石がくぼみの中で回転し,しだいに円形の穴に拡大して甌穴になると考えられている。甌穴が成長するにつれて深さも増すので,とびこんだ石も丸みを増し,穴の外へ出られなくなる。日本では花コウ岩の河床上に発達した木曾川の寝覚(ねざめ)ノ床の甌穴,片岩類の河床上に発達した荒川の長瀞(ながとろ)などが有名である。海岸にできる甌穴は海食甌穴と呼ぶこともある。神奈川県江の島海岸の隆起ベンチ上には海食甌穴が発達している。
執筆者:高山 茂美
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…溶食は石灰岩地域や熱帯に顕著である。急流の谷床にみられる甌穴(おうけつ)(ポットホールpothole)は,局部的に生じた渦流がそれに巻き込まれた礫を削磨材としてつくる円形のくぼみで,径,深さとも1mをこえるものもあり,削磨の典型的なものである。河食については谷床を深める下方浸食と谷幅を広げる側方浸食,さらに谷頭の方向に後退的に谷を伸ばしていく谷頭(こくとう)浸食の3種類が浸食の方向に関連して区分される。…
※「甌穴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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