長瀞(読み)ナガトロ

デジタル大辞泉 「長瀞」の意味・読み・例文・類語

ながとろ【長瀞】

埼玉県北西部、秩父郡長瀞町にある、荒川上流の峡谷。結晶片岩の浸食された岩畳甌穴おうけつ秩父赤壁がみられる。

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精選版 日本国語大辞典 「長瀞」の意味・読み・例文・類語

ながとろ【長瀞】

  1. 埼玉県西部、荒川中流の峡谷。外秩父山地を浸食してできたもので、河岸段丘の一部は平坦な結晶片岩が露出して岩畳と呼ばれ、対岸の断層の岩壁は秩父赤壁と呼ばれる。大正一三年(一九二四)国の名勝・天然記念物指定。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「長瀞」の意味・わかりやすい解説

長瀞(町)
ながとろ

埼玉県北西部、秩父郡(ちちぶぐん)北端にある町。1940年(昭和15)町制施行。1943年樋口(ひぐち)村を編入。以前は野上町(のがみまち)といったが、1972年町内にある景勝地長瀞にちなんで長瀞町と改称した。荒川河谷の段丘上に位置し、国道140号と秩父鉄道が通じる。江戸時代は絹、タバコの取引が盛んで、2、7日には市(いち)が立った。かつては養蚕やコンニャク栽培が盛んであったが、近年ではブドウリンゴなどの観光農業のほか、カキなどの栽培も行われている。全町域が県立長瀞玉淀(たまよど)自然公園に属し、長瀞系結晶片岩よりなる岩畳や清流の長瀞、頂上からの展望に優れる宝登山(ほどさん)(497メートル)などがあり、荒川渓谷を下る長瀞ライン下りも楽しめる。野上下郷石塔婆(のがみしもごうせきとうば)は日本最大の板碑(いたび)で国の史跡に指定されている。旧新井家住宅は国の重要文化財で、隣接して郷土資料館がある。ほかに県立自然の博物館がある。面積30.43平方キロメートル、人口6807(2020)。

[中山正民]

『『長瀞町史』全3巻(1991~1999・長瀞町)』



長瀞(埼玉県)
ながとろ

埼玉県北西部、秩父(ちちぶ)郡長瀞町にある荒川峡谷の一区域。荒川は秩父盆地の末端皆野(みなの)町親鼻付近から、秩父山地の東端寄居(よりい)町に至る間峡谷をなすが、このうち親鼻付近から長瀞町滝ノ上付近まで約8キロメートルの間が1924年(大正13)国の名勝・天然記念物に指定された。岩畳とよばれる結晶片岩の岩石段丘、甌穴(おうけつ)、断層破砕帯など地学教材が多く、長瀞系結晶片岩とともに、日本地質学発祥の地といわれる。とくに河床にみられる結晶片岩は、秩父赤壁(せきへき)といわれる対岸の絶壁とともに、この渓谷美の中心をなす。春の桜、初夏の新緑、秋の紅葉は、陸上からも、川下り(長瀞ライン下り)の舟によっても楽しむことができ、訪れる行楽客は多い。近くに県立川の博物館・自然の博物館、長瀞総合博物館や、信仰の山である宝登山(ほどさん)があり、観光シーズンには臨時電車が運転される。寄居町の玉淀(たまよど)付近を含めて、県立長瀞玉淀自然公園となっている。

[中山正民]



長瀞(山形県)
ながとろ

山形県中東部、東根市(ひがしねし)の一地区。旧長瀞村。山形盆地北部低湿地にあったことに由来する地名。中世初期の築城という長瀞城跡があり、最上(もがみ)氏などの居城であったが、1798年(寛政10)以降米津(よねきつ)氏長瀞藩の陣屋が置かれた。四の丸まであったという平城の堀が残っている。五穀豊穣を祈願する伝統芸能の長瀞猪子踊が伝わる。

[中川 重]

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改訂新版 世界大百科事典 「長瀞」の意味・わかりやすい解説

長瀞 (ながとろ)

埼玉県北西部,秩父郡長瀞町にある荒川中流の渓谷。親鼻橋から下流高砂橋まで約4kmにわたって板状節理の三波川(さんばがわ)系結晶片岩が露出し,左岸には岩石段丘,右岸には秩父赤壁と呼ばれる断層崖が発達する。石畳とも呼ばれる段丘面には広域変成作用による石墨片岩緑泥片岩,紅レン片岩などがみられ,また河床には甌穴(おうけつ),白鳥島には横臥褶曲があるなど地質学上貴重であり,国の名勝・天然記念物に指定されている。桜や紅葉の名所で舟下りも行われ,長瀞玉淀県立自然公園の中心をなしている。上長瀞の県立自然史博物館(現,県立自然の博物館)には秩父地方の鉱物や動植物の標本が展示され,小・中学生の課外教育にも利用されている。西方の宝登(ほど)山とともにハイキングコースとなっている。秩父鉄道長瀞駅下車。
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長瀞[町] (ながとろ)

埼玉県北西部,秩父郡の町。人口7908(2010)。秩父盆地北東端にあり,荒川沿いの河岸段丘に集落が位置する。野上町と称したが,1972年名勝・天然記念物の長瀞にちなんで改称。中心集落の野上は江戸時代,六斎市が開かれ,絹織物,タバコ,大豆などの取引が行われた。1911年熊谷から上武鉄道(現,秩父鉄道)が通じ,秩父の玄関口となった。長瀞玉淀県立自然公園の中心的な観光・行楽地で,長瀞を一望できる宝登(ほど)山(497m)にはロープウェーが設けられ,県立自然史博物館(現,県立自然の博物館),長瀞総合博物館などがある。日本一の大きさといわれる野上下郷石塔婆(史),秩父地方の板ぶき農家の代表的遺構である旧新井家住宅(重要文化財)がある。
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百科事典マイペディア 「長瀞」の意味・わかりやすい解説

長瀞【ながとろ】

埼玉県長瀞町・皆野町,荒川中流の峡谷(名勝・天然記念物)。秩父赤壁ともいわれ,江戸時代の《秩父日記》にも赤壁のことがみえる。三波(さんば)川変成岩と呼ばれる長瀞系結晶片岩からなり,地質学上重要。河岸段丘の一部はほぼ水平に並び,俗に岩畳という。甌穴(おうけつ)も見られる。舟遊,釣に適し,桜の名所。自然科学博物館がある。西の宝登(ほど)山はハイキング地。
→関連項目荒川甌穴埼玉[県]長瀞[町]皆野[町]

長瀞(山形県)【ながとろ】

山形県東根(ひがしね)市の西部にある地名。山形盆地の北方,最上川支流白水(しろみず)川の右岸を占める。肥沃な土地柄で,古代の末期から中世にかけて摂関家渡領小田島(おだしま)庄の中心地であったとされる。15世紀には出羽(でわ)の有力氏族最上氏の4代満家が城を築いて隠栖したという。近世になると幕府の陣屋が置かれたが,1723年幕府の質地流地禁止令が公布された際,この法令発布を徳政令発布と誤解した農民たちが質取主の家々に押しかけ,質地証文を破棄させる騒動が起こっている(長瀞質地騒動)。1798年,無城格・定府の大名米津(よねきつ)氏領となる。同氏は所領の過半を長瀞とその周辺に有していたため,長瀞に陣屋を置いて支配した。これを長瀞藩ともいう。

長瀞[町]【ながとろ】

埼玉県西部,秩父郡の町。1972年野上町が改称。荒川の上流域にあり,大部分は山地で川沿いにわずかな低地がある。観光の町として商工業が発達している。秩父鉄道が通じ,南部に長瀞(ながとろ)がある。30.43km2。7908人(2010)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「長瀞」の意味・わかりやすい解説

長瀞
ながとろ

埼玉県西部,荒川の上流部にある峡谷。荒川の浸食により長瀞系結晶片岩類が露出してできた峡谷で,全長約 4km,幅約 600mの範囲が 1924年名勝・天然記念物に指定。西岸の「岩畳」は岩石段丘で,緑泥片岩,石墨片岩などの岩石や甌穴がみられる。東岸に直立する「秩父赤壁」は結晶片岩類の節理を境とする断層面で,アラカシ,コナラ,ヤマツゲなどの自然林におおわれる。上長瀞の桃色の大露頭は,世界の希少岩石である紅簾片岩。長瀞玉淀県立自然公園の中心地で,自然科学博物館がある。

長瀞
ながとろ

山形県中東部,山形盆地の北部にある集落。東根市に属する。応永 21 (1414) 年斯波満家の入部以来小城下町として発達。寛文 11 (1671) 年銀山役所が移転,代官所が設けられた。古図では本丸を中心に2重の堀があり,その外側にも堀跡を残す。幕末米津氏が居住して,格子形の集落がいまも元のまま残る。

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事典・日本の観光資源 「長瀞」の解説

長瀞

(埼玉県秩父郡長瀞町)
さくら名所100選」指定の観光名所。

長瀞

(埼玉県秩父郡長瀞町)
日本百景」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の長瀞の言及

【荒川】より

…荒川は上流で中津川を合わせた後,数段の河岸段丘が発達する秩父盆地に入り,皆野町で赤平川を合流する。皆野より寄居までは結晶片岩に掘り込まれた狭い谷底を流れ,長瀞の景勝地をつくる。寄居から熊谷までが荒川の中流で,そこに寄居町を扇頂とする荒川扇状地を展開し,扇状地上には幾条もの古い流路跡が見いだされる。…

【甌穴】より

…甌穴が成長するにつれて深さも増すので,とびこんだ石も丸みを増し,穴の外へ出られなくなる。日本では花コウ岩の河床上に発達した木曾川の寝覚(ねざめ)ノ床の甌穴,片岩類の河床上に発達した荒川の長瀞(ながとろ)などが有名である。海岸にできる甌穴は海食甌穴とよぶこともある。…

※「長瀞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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