経営安定基金(読み)けいえいあんていききん

共同通信ニュース用語解説 「経営安定基金」の解説

経営安定基金

1987年の国鉄分割・民営化の際、経営基盤が弱いJR北海道四国九州の「三島会社」に支援策として与えられた。北海道6822億円、四国2082億円、九州3877億円で、路線網を維持するため運用益で鉄道事業赤字を穴埋めしている。JR会社法は取り崩しを禁じ、確実な方法での運用を義務付けている。既に完全民営化した本州のJR3社は基金を受けておらず、政府内ではJR九州株式上場に当たり返済を求める声も出ていた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「経営安定基金」の意味・わかりやすい解説

経営安定基金
けいえいあんていききん

北海道旅客鉄道(JR北海道)、四国旅客鉄道JR四国)、九州旅客鉄道(JR九州)のJR3島会社の経営を支えるために設けられた基金。1987年(昭和62)に国鉄が分割・民営化された際に、JR3島会社に交付された。大都市に路線をもつ東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)とは異なり、不採算の赤字ローカル路線を多く抱える3島会社は鉄道事業で利益を出すのがむずかしいため、経営安定基金の運用益で鉄道事業の赤字を穴埋めし、鉄道網を維持している。経営安定基金は国からの事実上の補助金であり、民営化に伴って国から交付された「持参金」と揶揄(やゆ)されることもある。基金の額はJR北海道6822億円、JR四国2082億円、JR九州3877億円で総額1兆2781億円。3島会社の鉄道事業の赤字規模に応じて、国鉄清算事業団(1998年解散)が拠出した。JR会社法は経営安定基金の取崩しを原則として禁じている。基金の一部は独立行政法人である鉄道建設・運輸施設整備支援機構に高金利で貸し付けており、2015年(平成27)3月期には、JR北海道は約364億円、JR四国は約147億円、JR九州は約126億円の運用益をあげている。なお早ければ2016年の完全民営化(上場)を目ざすJR九州の経営安定基金について、国土交通省は国庫への返納を行わず、JR九州に取崩しを認める方針である。JR九州は取り崩した経営安定基金を、長期借入金の返済、九州新幹線の施設使用料の一括前払い、鉄道関連投資にあて、財務基盤を強化する計画である。

[矢野 武 2015年9月15日]

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