改訂新版 世界大百科事典 「美豆良」の意味・わかりやすい解説
美豆良 (みずら)
古墳時代の男子の結髪の名称。人物埴輪の表現によって復原すると,長くのばした頭髪を左右に分けて両耳の付近で束ね,垂れた髪を輪に巻いて紐で結んだものである。人物埴輪の美豆良の形には,結んだ下端が肩まで垂れた〈下げ美豆良〉と,耳のあたりに小さくまとめた〈上げ美豆良〉とがある。上げ美豆良は農夫像などに見いだされる。下げ美豆良は労働には不適当であるから,この相違は身分の上下と関連するものであろう。1983年,茨城県新治村(現,土浦市)の武者塚1号墳から,樹皮状の紐で美豆良に結んだ頭髪が出土したのは,きわめてまれな例である。古代に男子の結髪を美豆良と呼んだことは,天照大神や神功皇后が武装のときに,髪を美豆良に纏(ま)いたという《古事記》の記載から知ることができる。しかし,この髪形は敦煌莫高窟の中唐の壁画(第158窟)の少年像にも類例があるので,もとは大陸から伝来したものであったかもしれない。
執筆者:小林 行雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報