ネズミモチ(読み)ねずみもち

改訂新版 世界大百科事典 「ネズミモチ」の意味・わかりやすい解説

ネズミモチ (鼠黐)
Japanese privet
Ligustrum japonicum Thunb.

暖地に生えるモクセイ科イボタノキ属の常緑小高木で,和名果実の形と色がネズミの糞(ふん)に,枝葉モチノキに似ることによる。別名タマツバキ。高さ6mになり,樹皮は灰黒色を呈する。密に分枝し,当年枝は灰青色。葉は対生し,卵形で長さ4~8cm,質が厚い。6月ころ当年枝に円錐花序を頂生して,径5mmほどの白い花を密につける。花冠は長さ5~6mmで,中ほどで4裂する。おしべは2本。11月ころ楕円形で長さ1cmたらずの紫黒色の核果を結び鳥が散布を助ける。関東南部から沖縄までと,朝鮮半島南部の暖帯に分布し,海沿いの地に多い。公害に強く,刈込みに耐えるので,庭園樹や生垣,高速道路の分離帯として用いられる。また材は緻密(ちみつ)で,道具の柄などに用いられる。同じイボタノキ属のトウネズミモチL.lucidum Ait.(漢名は女貞,英名glossy privet)は中国原産で,近年都会で多く植えられる。葉と花序がより大きく,透かしてみて葉脈が半透明にみえる点が異なる。干した果実(女貞)を強壮薬とする。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネズミモチ」の意味・わかりやすい解説

ネズミモチ
ねずみもち / 鼠黐
[学] Ligustrum japonicum Thunb.

モクセイ科(APG分類:モクセイ科)の常緑小高木。タマツバキともいう。高さ6メートルに達する。葉はやや厚い革質でつやがあり、楕円(だえん)形から広卵状楕円形で長さ4~7センチメートル、両端はとがり、全縁である。6月、枝先に円錐(えんすい)花序をつくり、小さな白色花を多数開く。花冠は中ほどまで4裂し、2本の雄しべと1本の雌しべがある。果実は楕円形、長さ0.8~1センチメートルで、10~11月、紫黒色に熟す。暖地に生え、関東地方以西の本州から沖縄、および朝鮮半島南部、台湾、中国に分布する。名は、果実がネズミの糞(ふん)に似て、葉がモチノキの葉に似るためについた。園芸品種のイワキは葉は小形で厚く、楕円形からやや円形。またフクロモチは枝が詰まって、やや円形で中央が膨らむ葉を密につける。これらのほか、斑(ふ)入りの品種もある。

 強い剪定(せんてい)に耐えて萌芽(ほうが)力が強く、庭木、生け垣に広く使われ、材は道具の柄(え)、楊枝(ようじ)などにする。果実は強壮剤とし、民間では葉を熱湯で柔らかくしたものをおできの吸い出しのために貼(は)る。

[小林義雄 2021年7月16日]


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百科事典マイペディア 「ネズミモチ」の意味・わかりやすい解説

ネズミモチ

モクセイ科の常緑低木〜小高木。本州(関東以西)〜沖縄,東アジアの暖地の山野にはえ,庭木,生垣として植栽される。葉は対生し,楕円形で厚く,光沢がある。6月,新枝の先に円錐花序を出し,長さ5〜6mmの白色花を密に開く。花冠は筒形で先が4裂。果実は長楕円形で,11〜12月,紫黒色に熟す。近縁のトウネズミモチは中国原産で葉と花序が大きい。近年,公園などによく植えられている。

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