ホシクサ(英語表記)Eriocaulon cinereum R.Br.

改訂新版 世界大百科事典 「ホシクサ」の意味・わかりやすい解説

ホシクサ
Eriocaulon cinereum R.Br.

湿地水田にはえるホシクサ科一年草。葉は線形で長さ3~8cm,根際から多数束生し,しばしば沈水状態にある。8~9月に多数の花茎を伸ばし,先端に1個ずつ白色の頭花をつける。和名は頭花を星にみたてたものである。頭花は卵状球形で径約4mm。総苞片は花より短い。少数雄花と多数の雌花がある。いずれも長さ1.5~2mm。雄花では3枚の外花被が先端だけを残して苞状に合着し,花冠を抱く。花冠は筒状に合着した3枚の内花被からなり,中央に6本のおしべがある。葯は白色。雌花は2枚の離生する白色の外花被をもち,内花被は退化している。子房は3室,花柱は先端が糸状に3裂し,宿存性。蒴果(さくか)は球形で径約5mm。全草薬用となり解熱剤に用いる。

 ホシクサ科Eriocaulaceaeは単子葉植物ツユクサ目に属し,13属約1200種がある。熱帯~亜熱帯を中心にみられ,とくに南アメリカに属と種の分布が集中している。デンプン質の胚乳をもつことや外花被と内花被の形態差が明らかなことから,ツユクサ科近縁と考えられている。

 ホシクサ属Eriocaulon(英名pipewort)は約400種を含み,日本には約40種が知られている。日本産の種はいずれもよく似た外見をもち,種の正確な同定には花部を顕微鏡下で解剖して観察する必要がある。イトイヌノヒゲE.decemflorum Maxim.は温帯域の湿地に普通で,2数性の花をもつ。植物体の外形や大きさには変異が多い。シラタマホシクサE.nudicuspe Maxim.は頭花が白花で美しい。三重県,愛知県,静岡県の特産である。ハナホシクサ属Syngonanthusは約200種を含み,中南米と熱帯アフリカに分布する。その1種,ハナホシクサS.elegans Ruhl.は南アメリカ原産で,ドライフラワーにして頭花を赤,黄,青などに染め,スターフラワーの名で市販されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホシクサ」の意味・わかりやすい解説

ホシクサ
ほしくさ / 星草
[学] Eriocaulon cinereum R.Br.
Eriocaulon sieboldianum Sieb. et Zucc.

ホシクサ科(APG分類:ホシクサ科)の一年草。葉は多数根生し、長さ3~6センチメートル、幅1~2ミリメートル、先は細くとがる。8~10月、3~15センチメートルの花茎を数~十数本出し、灰白色で卵球形、長さ3~4ミリメートルの頭花をつける。総包は頭花より小さく、目だたない。雄花は花弁、萼片(がくへん)ともに3枚、それぞれ互いに合着し、下部は筒になる。葯(やく)は白色。雌花は花弁はなく、萼片は2枚で離生する。水田や湿地に生え、北海道を除く日本全国、および東アジア、南アジア、オーストラリア、アフリカに分布する。名は、頭花が多数の花茎の先に点々とつくようすを、ちりばめられた星に見立てたもので、別名ミズタマソウ(水玉草)ともいう。

[清水建美 2019年6月18日]

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百科事典マイペディア 「ホシクサ」の意味・わかりやすい解説

ホシクサ

ホシクサ科の一年草。本州〜沖縄,東アジア〜オーストラリアに分布し,湿地や水田などにはえる。葉は線形で,根ぎわから束生し,長さ3〜8cm。8〜9月,多数の花茎を伸ばし,頂に灰白色で径約4mmの頭花を単生する。頭花には雄花が少数,雌花が多数つく。名は頭花を星になぞらえたもの。ホシクサ属にはほかに,頭花が白色で大きいシラタマホシクサ,またイヌノヒゲ,イトイヌノヒゲなど40種ほどがあり,いずれも湿地や水中にはえる。

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