供出(読み)キョウシュツ

デジタル大辞泉 「供出」の意味・読み・例文・類語

きょう‐しゅつ【供出】

[名](スル)
政府などの要請に応じて金品などを差し出すこと。
富者財産の多分を、軍費に―し」〈竜渓経国美談
政府が民間物資・主要農産物などを一定価格で半強制的に売り渡させること。「収穫米を供出する」

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精選版 日本国語大辞典 「供出」の意味・読み・例文・類語

きょう‐しゅつ【供出】

〘名〙 国などの要請によって物資をさし出すこと。特に、民間の物資、主要食糧農産物などを、一定の価格で半強制的に政府に売り渡すようにさせることをいう。
※経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉後「富者は財産の多分を軍費に供出し」

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改訂新版 世界大百科事典 「供出」の意味・わかりやすい解説

供出 (きょうしゅつ)

食糧管理制度のもとで1942年から54年にかけて行われた,農民から米麦,雑穀いも類の主要食糧の一定量を,政府が決めた価格で強制的に買い上げる方式。食管制度は戦中戦後の食糧不足時代に,主食の国家による直接統制・管理によって,消費者に一定の主食配給量を確保することを目的としていた。その配給量を確保するための,農民からの主食の集荷が供出であったが,それは非常事態のもとでは強制的なしかたで行われた。

供出制度の出発点は1939年に始まる米不足であり,その対策として国が米麦の直接統制に乗り出した時である。40年産米麦の集荷は,産業組合系統を通じて,政府が一元的に買収することになった。その場合,米については収穫量から自家保有米を除く全部を割当量とした一種の供出制がとられた。ついで太平洋戦争に突入後の42年に食糧管理法が成立すると,本格的な主食国家管理が行われ,供出制度は本格的なものとなり,その対象も米麦,いも,雑穀に拡大された。そして個々の農家に対する供出割当ても自家消費を除いた残余ではなく,全国的に統一された自家消費基準を生産量から差し引いた残りを,すべて供出させる供出優先原則に変わったのである。戦争の進行とともに供出はいっそう厳しくなり,42年産米には自家保有米の節約によって別途15万tの供出が求められ,43年産米だけであったが部落供出制度が採用され,また飯米不足の供出農家への還元配給も始められた。44年産米からは収穫後に割り当てる従来の方式に代わって,事前割当制が採用され,供出はいっそう農民を無視した国家による必要量確保優先の強権的性格をもつに至った。

 戦後は戦時下の強制力がなくなり,敗戦の混乱とともに供出制度も危機に陥った。それまでともかく100%前後あった供出進捗率も,45年産米は77.5%と落ちた。一方,やみ流通は顕在化し,いっそう農民の供出意欲を弛緩させた。こうしたなかで政府当局は,46年勅令をもって〈食糧緊急措置令〉を制定,新しい供出制度(強権供出)が再編成された。強権的な取締りとともに報奨制(供出の見返りとしての物資の特別配給)が採用され,50年度まで続けられた。このような占領下の供出は俗に〈ジープ供出〉と呼ばれたが,それは総司令部の権力をバックにしていたからである。一方,また各種奨励金がつけられたが,とくに超過供出奨励金(1947年度から採用)は48年産米では基本価額の2倍,49年産米では同一額になるほど大きかった。供出価格は戦時中は生産費方式,戦後はパリティ方式により決められたが,実勢より低かったため〈やみ〉に流れるのに対抗しようとしたのであり,強権といってももはや経済ベースを無視しえなくなったことを示していた。

 48年ころを底として食糧事情が好転し,食糧統制=供出も徐々に廃止されたが(1949年カンショ,51年雑穀,52年麦類),米についてだけは供出が残された。しかし51年産米からは供出の性格は変化し,経済ベースのものに変わった。割当ては事後割当てにもどり,府県への割当ては個別折衝となったため,供出割当てをめぐる政府と府県との政治的駆引きが激しく折衝は難航し,供出割当量も大幅に減った。そして55年産米からは供出割当てに代わって予約売渡制度が実施され,強権的な集荷としての供出は終わったのである。

戦時中の供出は生産者以外の現物小作料取得者としての地主に対しても割り当てられた。しかしその分の米は小作人が直接政府に納める方式であったため,供出制度は事実上の小作料金納をもたらした。供出価格も生産者の場合は奨励金,補給金が支給されたので,地主に対する供出価格より高かった。食糧増産のためには生産者を優遇せざるをえなかったのであり,戦時下における地主と小作の力関係の変化を表している。また,供出制度は以前に米の集荷の大部分を担っていた商人系統を排除し,政府の代理者としてではあれ産業組合(農業協同組合)系統の集荷独占をもたらした。以後,商人系統の集荷は若干復活したが,なお農協のシェアは圧倒的に高い。
 →食糧管理制度
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普及版 字通 「供出」の読み・字形・画数・意味

【供出】きようしゆつ

白状する。

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栄養・生化学辞典 「供出」の解説

供出

 戦中,戦後の一時期に生産者が食料を政府に売り渡すことを強制された制度.

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