所当(読み)ショトウ

デジタル大辞泉 「所当」の意味・読み・例文・類語

しょ‐とう〔‐タウ〕【所当】

中世、割り当てられて官または領主に納める物品
相当すること。適当。
「―の罪科おこなはれん上は」〈平家・二〉

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精選版 日本国語大辞典 「所当」の意味・読み・例文・類語

しょ‐とう ‥タウ【所当】

〘名〙
① 相当すること。適当なこと。当を得ていること。
東大寺文書‐永承三年(1048)正月三日・伊賀国符案「件処已為荒野年尚、無人寄作者、早被券房名、随開発得、令済所当官物
※平家(13C前)二「所当の罪科おこなはれん上は」
② 相殺すること。仕返し。返報
梅津政景日記‐慶長一八年(1613)院内銀山籠者成敗人帳「右之様子語候へは、しよたうのよし申候而、太郎兵へ小屋押籠、右之喜蔵は不申、久七と申大工、前後を不存居候処を、さんさんにたたき、あたままてうちわり候」
③ 中世、田畠に賦課された年貢公事
愚管抄(1220)七「武士将軍をうしないて、我身にはをそろしき物もなくて、地頭地頭とてみな日本国の所当とりもちたり」

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改訂新版 世界大百科事典 「所当」の意味・わかりやすい解説

所当 (しょとう)

(1)中世において,国衙荘園領主に納入すべき官物かんもつ),年貢雑役などのこと。所当官物,年貢所当というように,官物や年貢と連結して使用される場合が多く,その独自の意味を定義することは難しい。例えば,《御成敗式目》の第5条は,その条目を〈一,諸国地頭令抑留年貢所当事〉とするが,本文では〈右抑留年貢之由〉と〈年貢〉1語におきかえているのである。本来の意味は(2)の〈相当する〉に通じていたようで,988年(永延2)の《尾張国郡司百姓等解文》の第6条では,〈但,疋別所当料田〉(疋別に当たれる所の料田)というように使用されている。

(2)相当すること,適当なこと,当を得ていることの意の一般的用例としては,《平家物語》(巻二,教訓状)の〈所当の罪科おこなはれん上は,退いて事の由を陳じ申させ給ひて,君の御ためには弥(いよいよ)奉公忠勤をつくし〉などがある。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「所当」の解説

所当
しょとう

中世の田畠に課せられるさまざまな年貢や公事(くじ)。本来は「相当する」「適当する」という意味の一般的な広い用法で,10~11世紀には所当官物(しょとうかんもつ)・所当年貢・所当地子(じし)・所当公事など内容を限定する語に冠して用いられ,国衙(こくが)・荘園領主などへの官物・年貢・地子・加地子なども含んだ。12世紀以降,所当が単独で用いられるようになり,しばしば所当・公事と並称されるようになるが,鎌倉時代にも国衙所当など官物の用例もあり,必ずしも年貢と同じではなかった。しかし,官物・地子などの意味で用いられることが少なくなり,しだいに田畠の租だけをさすようになる。

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世界大百科事典(旧版)内の所当の言及

【年貢】より


【中世】
 荘園において田畠を耕作する者は,荘園領主に生産物の一部を貢納する義務をもっていた。この貢納物が年貢であるが,平安時代から鎌倉時代にかけては所当(しよとう)とか乃貢(のうぐ)あるいは土貢(どこう)などと呼ばれることも多かった。畠の年貢は地子(じし)と呼ばれている。…

※「所当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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