束稲山(読み)たばしねやま

日本歴史地名大系 「束稲山」の解説

束稲山
たばしねやま

平泉町東端に位置し、当町と東磐井ひがしいわい東山ひがしやま町との境をなす。標高五九五・七メートル。古く駒形こまがた山と称し、桜の名所としてさくら山とも称された。「封内風土記」は多和志根と記す。西行は「山家集」に「陸奥の国に平泉に向ひて、たはしねと申す山の侍に、異木は少き様に桜の限見えて、花の咲きたりけるを見て詠める」と記し、「きゝもせずたはしね山の桜花吉野の外にかゝるべしとは」と詠む。「吾妻鏡」文治五年(一一八九)九月二七日条には「駒形嶺」とみえ、桜が「並殖」された山では四、五月になっても残雪が消えなかったと記す。元禄九年(一六九六)の毛越寺・中尊寺堂塔等書上写(西洞文書)には「桜山」と記され、「磐井郡東山之内ニ在、当時長部村ト申候但駒形之峯とも申候」とある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「束稲山」の意味・わかりやすい解説

束稲山
たばしねやま

岩手県南西部、西磐井(にしいわい)郡平泉町(ひらいずみちょう)と一関市(いちのせきし)東山(ひがしやま)町の境界にある山。標高596メートル。頂上からは平泉、中尊寺、衣川(ころもがわ)古戦場などが一望できる。『吾妻鏡(あづまかがみ)』によると駒形嶺(こまがたみね)ともいい、安倍頼時(あべのよりとき)が桜1万本を植えたと伝える。西行(さいぎょう)は「ききもせず束稲山のさくら花吉野の外にかかるべしとは」と詠んでいる。現在ではツツジの名所で、8月16日には山腹で「大文字送り火」の行事が行われる。

[川本忠平]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「束稲山」の意味・わかりやすい解説

束稲山
たばしねやま

岩手県南西部,一関市奥州市平泉町にまたがる山。標高 596m。古くは多和志根山と書かれ,サクラの名所で西行法師の歌にも詠まれた。現在はツツジの名所で,頂上からの眺望も優れている。

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