精選版 日本国語大辞典 「着・著」の意味・読み・例文・類語
きる【着・著】
〘他カ上一〙 (身体に何かをつける意)
① 身につける。身にまとう。着用する。
※古事記(712)下・歌謡「白妙の 袖岐(キ)備ふ」
※竹取(9C末‐10C初)「今はとてあまの羽衣きる折ぞ君を哀と思ひ出でける」
(ロ) 下半身につける衣類をはく。
※宇津保(970‐999頃)あて宮「うへの袴をかへざまにき、片しに足二つをさしいれて」
(ハ) 頭部をおおう笠の類をかぶる。かずく。
※万葉(8C後)三・三七四「雨ふらば盖(き)むと思へる笠の山人にな盖(き)せそぬれは漬(ひ)つとも」
② 自分の身に受ける。身に負う。こうむる。
※御伽草子・猿源氏草紙(室町末)「又いなと申せば、人の怨みをきるといひ」
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初「とはいふものの、おれもまアくやしい難をきたじゃアねへか」
③ (①より転じて) あるものでおおう。
④ 酒を飲む。
※随筆・秉穂録(1795‐99)一「研北雑志に席琰嘗謂レ人曰、貧者以レ酒為レ衣と。今賤き人のことばに、酒のむ事を、きるといふに同じ」
ちゃく【着・著】
[1] 〘名〙
① 行きつくこと。時刻や場所を示す語に付けて用いることもある。到着。「五時着」「東京着」
② 衣服などを身につけること。
※浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)上「心ざしを着いたすと、いただいて着る有さま」
③ 着物(きもの)の意。
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉二「着物(チャク)が無服(まる)で、初会(しょかい)にもでられないしまつの処へ」
※随筆・麓の色(1768)三「ちゃくは巾着切なり」
⑤ ⇒じゃく(着)
[2] 〘接尾〙
① 衣服などを数えるのに用いる。「洋服二着」「袴一着」など。
② 到着の順番を数えるときに用いる。
※スポーツを語る(1932)〈鳩山一郎〉一〇「驚異的世界レコード出しながら、惜しい哉二着となった」
③ 囲碁で、石をうつ回数を示すときに用いる。「第一着から長考する」
ちゃく‐・する【着・著】
[1] 〘自サ変〙 ちゃく・す 〘自サ変〙
① いたりつく。いたる。とどく。到着する。
※古今著聞集(1254)二「天童十人出現して、舟をになひて岸に着しけり」
③ ⇒じゃくす(着)
[2] 〘他サ変〙 ちゃく・す 〘他サ変〙
① 衣服などをきる。まとう。着用する。また、携帯品などを身につける。持つ。携行する。
※古今著聞集(1254)一五「君の御琵琶は束帯ただしくしたる人の折ゑぼし着したるに似させ給たる」
※読本・忠臣水滸伝(1799‐1801)前「当家の号衣を披(チャクシ)たるゆゑ」
② 視線などをあるものに注意して向ける。
※野分(1907)〈夏目漱石〉一「縺れたる糸の片端も眼を着(チャク)すれば只一筋の末とあらはるるに過ぎぬ」
じゃく‐・す ヂャク‥【着・著】
〘自サ変〙 心がある物事に深くとらわれる。強くこだわる。執着する。ちゃくする。
※今昔(1120頃か)一「愛欲に着して仏法を不信ぜず」
※浮世草子・近代艷隠者(1686)一「一生妻といふ物なければ、かれに着(ジャク)する事もなく」
け・り【着・著】
〘他ラ変〙 (動詞「きる(着)」の連用形「き」に「あり」の接続した「きあり」の変化したもの) 着ている。
※万葉(8C後)六・九七九「吾が背子が著(ける)衣(きぬ)薄し佐保風はいたくな吹きそ家にいたるまで」
かる【着・著】
〘動〙 「けり(着)」の連体形「ける」の変化した上代東国方言語形。着ている。身に着けている。
※万葉(8C後)二〇・四四三一「小竹が葉のさやぐ霜夜に七重加流(カル)衣に益せる子ろが膚はも」
じゃく ヂャク【着・著】
〘名〙 心が物事に深くとらわれること。執着。執着心。
※正法眼蔵(1231‐53)海印三昧「しるべし、包含は著にあらず、包含は不宿なり」
ちゃく‐・す【着・著】
〘自他サ変〙 ⇒ちゃくする(着)
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