神分(読み)じんぶん

精選版 日本国語大辞典 「神分」の意味・読み・例文・類語

じん‐ぶん【神分】

〘名〙 仏語諸神法施を行なう儀式で、法会修法のおり、その地の大小神祇、また、特に尊崇する神祇に擁護を請い、般若心経などを読誦すること。神道祭儀の降神(こうしん)神楽採物(とりもの)に相当する。
※伝教大師消息(824‐831頃)「但有神分転経事。却帰即拝奉」
大鏡(12C前)六「先は神分の心経表白のたうびて、かねうち給へりしに」

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改訂新版 世界大百科事典 「神分」の意味・わかりやすい解説

神分 (じんぶん)

仏事法要の部分名。広狭2義に用いる。法要の導師が,諸天諸神のためにその解脱増威を祈願する句を唱えるのが狭義の神分で,〈総神分(そうじんぶん)〉とも称する。〈大梵天王帝釈天王を始め奉り……〉などと名号(みようごう)を挙げ,〈……に至るまで,離業証果(りごうしようが)せしめ奉らんがために,総神分に般若心経,大般若経名〉などと結ぶ。仏教では,神の世界は迷界の六道の一つで,神通力はあるものの業苦を離れられないため,功徳を求めて法要の場に来臨していると考えるので,その神々のために経文や経題を唱誦するのである。通常この総神分のあとには,人間界の過去者・現在者のための祈願句を続け,〈貴賤霊等皆成仏道のために……〉〈金輪聖皇(天皇)天長地久のために……〉〈国家安穏諸人快楽のために……〉などと連ねるが,前記の総神分と同形式の詞章・曲節なので,これも含めて広義に神分と称することがある。概して天台系では狭義に,真言系では広義に使用する。神分はごく簡単な曲節で,一段ごとにけい)などを打つ。略儀にはフシを省略して素読みにすることもある。
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