仏教儀式(法要)の中心となる僧の役名。通常は一山の代表,あるいはそれに準ずる立場の人がその任にあたり,法要を主宰する。法要はいずれの場合も明確な趣旨をもって執行され,つねに一定の構造による首尾一貫した次第が構成されているが,導師はその最高責任者として法要の出勤者全体を統括し,みずからも最も重要な作法を行う。たとえていえば指揮者と独奏者を兼ねた立場である。導師には法要全体を統括する役割の導師と,法要の特定の部分のみの主役を勤める導師があり,前者を大導師,後者を時(じ)導師などと呼ぶ。時導師は1日に数回行われる法要のおのおのの時(じ)の導師という意味である。1日に6回の法要が行われる六時(ろくじ)の法要では,それぞれの時ごとに交代で声明(しようみよう)や所作の先導役が出る。時導師には比較的若年の僧侶が立つことが多く,法要の構成要件の基本的な部分を受け持つ。法要の主旨に直接かかわる祈願などは大導師が受け持つ。このほか部分主役に相当する役名としては,誦経(ずきよう)導師や神分導師があり,誦経導師は真言宗の曼陀羅供で誦経別行と称する法要形式のおりに設けられ,大導師が作法を行って,礼盤(らいばん)から降りた後,誦経役の導師が礼盤に登り,法要の趣旨などを述べる表白(ひようびやく)を朗読したりする。ほかに,大規模な庭儀法要などには脇導師,副導師などを設けることがある。四天王寺聖霊会では,導師に相当する役が左右に存在し,一舎利(いつしやり)・二舎利(にしやり)と称している。また導師と同様の役割を,宗派や法要の性格によって調声(ちようしよう)とか主懺(しゆせん)とか称することもある。
執筆者:高橋 美都
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
唱導師のこと。元来は人を迷道から善道に導く師、衆生(しゅじょう)を仏道に誘引する教化(きょうげ)者、または仏・菩薩(ぼさつ)のこと。転じて、仏教の法要儀礼に際し、衆僧を率いてその法要を主宰し、正面拝席(はいせき)についてその儀礼を中心となって執行する僧。また、観音懺法(かんのんせんぼう)などの儀礼で、祭文(さいもん)を表白(ひょうびゃく)宣読する役の僧。禅宗寺院では、法会の首座にあって経文を唱え始め、衆僧の誦経(じゅきょう)を導く維那(いの)の役を意味することもあった。
[石川力山]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…仏事の法具名。密教立(みつきようだて)の法要のとき,導師(どうし)が修法に用いる正方形大型の壇(図)。四隅に細い棒状の橛(けつ)という柱を立て,これに壇線という五色の糸でよった縄をからませて四方を囲む。…
※「導師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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