箜篌(読み)クゴ(英語表記)kōng hóu

デジタル大辞泉 「箜篌」の意味・読み・例文・類語

く‐ご【××篌】

東洋弦楽器の一。きんに似たふせ箜篌、ハープに似たたて箜篌、先端鳳首ほうしゅ装飾のある鳳首箜篌があったが、早くに滅びた。くうご。→百済琴くだらごと

くう‐ご【××篌】

くご(箜篌)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「箜篌」の意味・読み・例文・類語

く‐ご【箜篌・篌】

〘名〙 (「くこ」とも) 東洋の弦楽器。琴(きん)に似た臥箜篌(がくご)と、曲尺形の枠に多数の弦を張ったハープ型の竪箜篌(たてくご)と、鍋形の共鳴胴の上に湾曲した支柱を立て、その先端が鳳の首の形をした鳳首箜篌(ほうしゅくご)とがある。正倉院に現存するのは竪箜篌で、百済(くだらごと)ともいう。くうご。くぐ。こうこう。
西大寺資財流記帳‐宝亀一一年(780)「箜篌一張〈浅泥銀平文檉鉄子十六枚〉白地錦嚢、裏赤地刺物」 〔合部金光明経‐一〕

くう‐ご【箜篌】

〘名〙 =くご(箜篌)色葉字類抄(1177‐81)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「箜篌」の意味・わかりやすい解説

箜篌 (くご)
kōng hóu

中国朝鮮日本古代弦楽器。中国でははじめ空侯,坎侯と書き,日本では篌,箜篗,𥫤篗などと書いた。大別して臥箜篌(がくご)(長胴のチター),竪箜篌(じゆくご)/(たてくご)(角型のハープ),鳳首箜篌(ほうしゆくご)(弓型のハープ)の3種がある。空侯,坎侯と呼ばれたものは長胴のチターと推定され,前漢の武帝(在位,前141-前87)代に存在した。角型のハープは漢代あるいは南北朝に西域から伝来した。《隋書》以後,この2種の楽器をそれぞれ臥箜篌(横箜篌とも),竪箜篌(胡箜篌とも)と書くようになった。竪箜篌は隋・唐の胡楽の代表的楽器で21~23弦,起源はガンダーラササン朝ペルシアを経て古代アッシリアにまでさかのぼりうる。臥箜篌は唐の俗楽系宮廷楽に用いられたが,構造等不明な点が多い。明の王圻(おうき)の《三才図会》や豊原統秋の《体源鈔》の図では琴瑟に似て4~6弦を有する。鳳首箜篌はインドのビーナー(弓型ハープ)がガンダーラ,亀茲(きじ)を経て南北朝ころ伝来したもので10弦前後ある。竪箜篌は奈良時代に日本に伝来,正倉院に残欠がある。臥箜篌も渡来したと考えられ,篌などと呼んだらしい。鳳首箜篌は日本では仏画に変形したものがみられるのみである。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「箜篌」の意味・わかりやすい解説

箜篌
くご

古代東アジアの弦鳴楽器。竪(たて)箜篌、鳳首(ほうしゅ)箜篌、臥(ふせ)箜篌の3種類あり、前二者はハープ属、臥箜篌はチター属に属する。竪箜篌は、弓なりの響胴と胴から直角に出た棹(さお)からなり、胴と棹の間に原則として21~23本の弦を張る。中国隋(ずい)、唐代の胡楽(こがく)の代表的楽器で、日本では別名を百済琴(くだらごと)というように、朝鮮半島の百済楽とともに渡来したが、その源はササン朝ペルシアの角(かく)型ハープ(チャング)、さらに古代アッシリアにまでさかのぼることができる。現在、正倉院にその残欠(瑇瑁螺鈿(たいまいらでん)箜篌)が保存され、近年ではその復原や、復原楽器による演奏の試みがなされている。鳳首箜篌は、文字どおり鳳凰(ほうおう)をかたどった弓型ハープで、弦は10本前後。インド起源で、中国には南北朝時代に伝来したが、日本には伝わらなかった。臥箜篌は、固定フレット付きの琴(きん)で、朝鮮の玄琴の祖型である。中国起源で唐代の俗楽系宮廷楽に用いられた。

[山口 修]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「箜篌」の意味・わかりやすい解説

箜篌
くご

古代中国,朝鮮,日本の楽器。竪箜篌,臥箜篌,鳳首箜篌の3種がある。琵琶の3種と同じように,竪箜篌は西アジアに源を発し,漢代に西域の天山南道を通って中国に入った竪形ハープで,百済楽の伝来とともに日本に伝わり正倉院に残欠が遺存。鳳首箜篌は古代インドの弓形ハープ (ビーナー) が6世紀に天山北道を経て中国に入った。日本に渡ったかどうかはわからないが,仏画 (高野山の「二十五菩薩来迎図」など) にみえる。臥箜篌は,ハープではなく,琴,箏の類で,中国で発生。4~5弦をもち,琵琶の柱のようなものが十数枚あり,その上で弦を押える。朝鮮に渡って現在も使われる玄琴となった。日本には奈良朝に高麗楽 (こまがく) の一楽器として入り箜篌などといわれた。いずれも平安期に絶えた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「箜篌」の意味・わかりやすい解説

箜篌【くご】

古代中国の楽器。中国語ではコンホウ。撥弦(はつげん)楽器。竪(たて)形ハープ系の竪箜篌,ツィター系の臥(が)箜篌,舟形ハープ系の鳳首(ほうしゅ)箜篌の3種類があった。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「箜篌」の解説

箜篌
くご

古代の楽器の一つ
百済 (くだら) 琴ともいう。ハープ系の楽器で,竪箜篌は懐に抱え,あるいは座し,あるいは立って両手で奏でた。古代アッシリアで用いられ,ペルシア・西域を経て中国に伝わった。日本には,奈良時代に百済から伝来,正倉院に遺片がある。雅楽に用いられた。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android