中国,朝鮮,日本の古代弦楽器。中国でははじめ空侯,坎侯と書き,日本では,篌,箜篗,𥫤篗などと書いた。大別して臥箜篌(がくご)(長胴のチター),竪箜篌(じゆくご)/(たてくご)(角型のハープ),鳳首箜篌(ほうしゆくご)(弓型のハープ)の3種がある。空侯,坎侯と呼ばれたものは長胴のチターと推定され,前漢の武帝(在位,前141-前87)代に存在した。角型のハープは漢代あるいは南北朝に西域から伝来した。《隋書》以後,この2種の楽器をそれぞれ臥箜篌(横箜篌とも),竪箜篌(胡箜篌とも)と書くようになった。竪箜篌は隋・唐の胡楽の代表的楽器で21~23弦,起源はガンダーラ,ササン朝ペルシアを経て古代アッシリアにまでさかのぼりうる。臥箜篌は唐の俗楽系宮廷楽に用いられたが,構造等不明な点が多い。明の王圻(おうき)の《三才図会》や豊原統秋の《体源鈔》の図では琴瑟に似て4~6弦を有する。鳳首箜篌はインドのビーナー(弓型ハープ)がガンダーラ,亀茲(きじ)を経て南北朝ころ伝来したもので10弦前後ある。竪箜篌は奈良時代に日本に伝来,正倉院に残欠がある。臥箜篌も渡来したと考えられ,篌などと呼んだらしい。鳳首箜篌は日本では仏画に変形したものがみられるのみである。
執筆者:三谷 陽子
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古代東アジアの弦鳴楽器。竪(たて)箜篌、鳳首(ほうしゅ)箜篌、臥(ふせ)箜篌の3種類あり、前二者はハープ属、臥箜篌はチター属に属する。竪箜篌は、弓なりの響胴と胴から直角に出た棹(さお)からなり、胴と棹の間に原則として21~23本の弦を張る。中国隋(ずい)、唐代の胡楽(こがく)の代表的楽器で、日本では別名を百済琴(くだらごと)というように、朝鮮半島の百済楽とともに渡来したが、その源はササン朝ペルシアの角(かく)型ハープ(チャング)、さらに古代アッシリアにまでさかのぼることができる。現在、正倉院にその残欠(瑇瑁螺鈿(たいまいらでん)箜篌)が保存され、近年ではその復原や、復原楽器による演奏の試みがなされている。鳳首箜篌は、文字どおり鳳凰(ほうおう)をかたどった弓型ハープで、弦は10本前後。インド起源で、中国には南北朝時代に伝来したが、日本には伝わらなかった。臥箜篌は、固定フレット付きの琴(きん)で、朝鮮の玄琴の祖型である。中国起源で唐代の俗楽系宮廷楽に用いられた。
[山口 修]
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