耳川(読み)みみかわ

日本歴史地名大系 「耳川」の解説

耳川
みみかわ

県北部の主要河川で、日向市美々津みみつを河口とする二級河川。源流域は九州山地のほぼ中央部熊本県境の向坂むこうさか(一六八四・四メートル)から国見くにみ(一七三八・八メートル)を経て銚子笠ちようしがさ(一四八八・九メートル)に至る分水界の東側山岳地帯である。全延長九一・一キロで県下第一、支流も十根とね川・柳原やなばる川・坪谷つぼや川など二八流がある。明治一九年(一八八六)の統計及内務報告(県庁文書)には美々津川と表記され、一〇支流をあげているが、そのうち名称が今日まで変わらないのは坪谷川・小原井おはらい川・七ッ山ななつやま川・不土野ふどの川である。中世・近世の史料には美々川ともみえる。源流から河口までの流域の大部分がV字谷の連続で、西郷さいごう小原おばる地区から上流域にかけては深い峡谷が続く。上流の椎葉しいば村の中心上椎葉地区では役場や民家が谷壁沿いの狭い場所に集落を形成する。ここに残る那須家住宅(通称鶴富屋敷)は国指定重要文化財。険しい地形が村に隠田集落的性格を与え、鶴富姫伝承という平家落人伝説を残したものと思われる。山村では谷筋は他地域に通じる往還として重要である。上椎葉で分岐する小崎こざき(一次支流)の谷筋は西米良にしめら村に通じ、下椎葉で分岐する十根川(一次支流)の谷筋は鞍岡くらおか地区へ通じ、現在は小林市から熊本県阿蘇町までの国道二六五号の一部となっている。鞍岡へは従来は国見峠越の難所があったが、平成八年(一九九六)国見トンネル(長さ二七七七メートル)が開通した。七ッ山川(一次支流)の谷筋は飯干いいぼし峠を経て五ヶ瀬町への道(国道五〇三号)となっている。

耳川
みみがわ

美浜町のほぼ中央部を北に流れる。赤坂あかさか(八二三・八メートル)の西方、新庄しんじよう折戸おりと粟柄あわがら能登又のとまたの各谷を水源とし、佐野さの興道寺こうどうじ河原市かわらいちなどを経て洪水こうず(向水山)の東側を流れ、和田わだに至り、若狭湾に注ぐ。全長約一六キロ。伝えでは昔は氾濫して川筋が定まらなかったが、佐野にあいの宮(現愛神社)を祀ってから流れが定まったという。堰が多く設けられ、近世の耳庄みみのしよう組・西郷さいごう組各村の水田を灌漑した。堰の初めは明らかでないが太閤検地以後、あら・佐野・ごういま宮代みやしろまつ・河原市・かみの各堰があり、元和年間(一六一五―二四)には西川にしかわ堰・中の堰・しん堰・細工さいく堰など一四の堰があった(三方郡誌)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「耳川」の意味・わかりやすい解説

耳川 (みみかわ)

宮崎県北西部,椎葉地方の九州山地に源を発し,東流して日向市南西部で日向灘に注ぐ川。美々川あるいは美々津(みみつ)川ともいう。流路延長91km,流域面積883km2,支流総数25。この川の特色は,上流から河口まで山地が連続して,深い谷が形成されていることである。上流の椎葉地方は標高1000mを超える九州山地に峡谷が刻まれ,古くから海岸と連絡する道路はなく,耳川が唯一の交通路であった。このため海岸地帯との交渉はほとんどなく,南方の米良荘(めらのしよう)とともに落人伝説をもつ秘境(隠田地域)といわれ,外部との連絡はむしろ九州山地の峠を越えて肥後側ともたれていた。中流域は入郷(いりごう)地域(東郷,西郷,南郷,北郷)といわれ,山林が全体の90%を占める。1932年,椎葉地方に山林をもつ住友林業が山林開発のため,当時の費用で100万円をかけて富高(現,日向市)から椎葉に通じる道路を開設。これによりこの地方の様相が一変するとともに,耳川上流域の林産物の集積地であった河口の美々津が衰えることになった。この道路が現在の国道327号線である。耳川は地形,地質,降水量の関係から県内一の水力発電量を有し,日本最初のアーチ式ダムの上椎葉ダム(1955竣工)による上椎葉発電所(最大出力9万kW)をはじめ,7発電所で合計28万7080kW(1997)を発電している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「耳川」の意味・わかりやすい解説

耳川【みみかわ】

宮崎県北部の川。美々津川とも。長さ91km,流域面積881km2椎葉村の九州山地東面に発し,東流して日向(ひゅうが)市の南部で日向灘に注ぐ。上・中流部は深い峡谷をなし,電源開発が進み,上椎葉ダム塚原ダムなどがある。河口に美々津港がある。
→関連項目椎葉[村]東郷[町]宮崎[県]

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「耳川」の意味・わかりやすい解説

耳川
みみがわ

宮崎県北部、九州山地主部椎葉村(しいばそん)に発して東流し、日向(ひゅうが)市美々津(みみつ)で日向灘(なだ)に注ぐ川。「みみかわ」とも。延長102キロメートル、流域面積883平方キロメートル。上・中流部は九州山地を、下流部は尾鈴(おすず)山石英斑岩(はんがん)を侵食して、河口付近までV字谷を形成するため、沖積平野はみられない。そのため流域は入郷(いりごう)地帯や椎葉、諸塚(もろつか)など人口のもっとも少ない山村地域である。おもな支流は上流部に多く、十根(とね)川、不土野(ふどの)川、七ツ山(ななつやま)川、坪谷(つぼや)川などがある。耳川水系が開けたのは昭和以降の電源開発による。上椎葉発電所など八つの発電所が設けられ、河谷に沿い日向市より国道327号が走る。

[横山淳一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「耳川」の意味・わかりやすい解説

耳川
みみかわ

美々川とも書き,美々津川ともいう。宮崎県中部を東流し,日向灘に注ぐ川。全長 102km。宮崎,熊本県境の三方山 (1578m) に発し,十根川,七山川,柳原川などの支流を合流し,下流近くで坪谷川を合流,日向市美々津付近で日向灘に注ぐ。上・中流部は峡谷を形成し,日本最初のアーチ式ダム,上椎葉ダムをはじめ,岩屋戸,塚原,諸塚,山須原,西郷,大内原などのダムが連続し,県下最大の電源地帯を形成。上流域の椎葉には平家落人の伝説が残り,河口の日向市美々津港は,神武天皇東征の出帆地と伝えられる。谷に沿って国道 327号線が通じる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android