負担金(読み)ふたんきん

精選版 日本国語大辞典 「負担金」の意味・読み・例文・類語

ふたん‐きん【負担金】

〘名〙
特定公益事業によって特別の利益を受ける者などに、その事業に必要な経費の全部または一部を負担させる金銭。都市計画負担金、道路負担金、河川負担金など。
② 国や地方公共団体が、その事業費の一部を負担するために支出する金銭。
地方自治法(1947)一九九条「当該普通地方公共団体補助金交付金、負担金、〈略〉利子補給その他の財政的援助を与えているものの」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「負担金」の意味・わかりやすい解説

負担金 (ふたんきん)

(1)国または地方公共団体が特定の公共事業を行う場合に,その事業に要する経費の全部または一部にあてるために,その事業と特別の関係のある者に対して課する金銭給付義務の内容をなす金銭をいう。人的公用負担(〈公用負担〉の項参照)の一種とされているが,損失補償制度とともに,行政作用による利益・不利益の偏在を調整して公的負担の公平を図る利害調整の制度とみることができる。負担金は,義務者の性質に応じて,〈受益者負担金〉〈原因者負担金〉〈損傷者負担金〉の3種に分けられる。受益者負担金は,公共事業によって特別の利益を受ける者に対して,その利益を受ける限度に応じて事業の経費の一部を負担させるものであり(道路法61条,河川法70条,都市計画法75条等),原因者負担金は,特定の公共事業の実施の必要を生じる原因を作った者に対して課せられるものであり(下水道法19条,道路法58条,河川法67条等),損傷者負担金は,公共施設の利用者が施設を損傷したため,その修理等の工事が必要となった場合に,その損傷者に対して課せられるものである(下水道法18条)。負担金は,いずれも行政庁の命令によって一方的に課せられ,その滞納処分に対しては強制徴収が認められるので,租税に類似した性質をもつ公的な賦課金である。しかし,租税が国・地方公共団体の財政収入を目的として,国民の負担能力に応じて課せられる金銭給付義務であるのとは性質を異にする。負担金は,客観的な算定基準を設定しにくいこともあって,下水道の原因者負担金などを除き,あまり活用されていないのが現実である。

(2)国または地方公共団体が,地方公共団体または国の事務・事業に要する経費の全部または一部を負担する場合に,これを負担金ということがある(地方財政法17条,17条の2)。国庫負担金には,一般行政費,建設事業費,災害関係事務経費に関する3種がある。この負担金は,財政上の一定の金銭負担を技術的に表現したもので,人的公用負担としての負担金とは異なる。

 負担金に類似したものに分担金がある。分担金は,一部の住民のみが特別の利益を受けるような行政サービスについて,その費用にあてるために受益住民から徴収するものである(地方自治法224条)。公共下水道の建設に際して徴収されることが多い。なお負担金と分担金との区別がつきにくい場合があり,たとえば,身体障害者負担金(身体障害者福祉法38条)などは,分担金とまったく同質のものである。また負担金が分担金と呼ばれることもある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「負担金」の意味・わかりやすい解説

負担金
ふたんきん

負担金には次の二つの種類がある。(1)国または地方公共団体が行う特定の事業に対し特別の利害関係を有する者に、その事業に要する経費の全部または一部を負担させるために、国または地方公共団体が一方的に課する金銭のことである。特別の利害関係者の性格により、受益者負担金、原因者負担金、損傷者負担金に区別される。強制的に一方的に課するものであるので、法律上の根拠を必要とする。現行法上、地方自治法第224条、道路法第61条、都市計画法第75条などに、負担金についての規定がある。(2)国と地方公共団体との間および地方公共団体相互の間にみられるもので、一定の事業についてその経費の負担割合が定められているときに、それに従って支出すべき金銭的負担のことである。これには、国の直轄事業に対する地方公共団体の負担金、地方公共団体またはその機関の行う事務に対する国の負担金、区市町村の行う事務に対する都道府県の負担金、都道府県が行う土木その他の建設事業に対する区市町村の負担金などがある。

[大川 武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「負担金」の意味・わかりやすい解説

負担金【ふたんきん】

(1)特定の公益事業に特別の利害関係をもつ者に,その経費の全部または一部を負担させるために課する公法上の金銭給付。都市計画法,道路法,河川法等によるものがある。(2)地方財政法上,国と地方公共団体相互の間にも,その事業費の全部または一部を負担するために負担金の支出が認められる。地方公共団体の事業費を国が負担する場合(国庫負担金)は補助金等適正化法(1955年)等で規制される。
→関連項目公用負担補助金

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

農林水産関係用語集 「負担金」の解説

負担金

国または地方公共団体、土地改良区などが、農業水利施設等の整備または管理等に必要な経費として、受益者に対して課す金銭。土地改良区の場合、賦課金ということが多い。

出典 農林水産省農林水産関係用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の負担金の言及

【公用負担】より

… 公用負担は,その内容に着目して,人的公用負担と物的公用負担とに大別される。人的公用負担は,特定の公共事業のために必要な作為,不作為,給付の義務を特定人に課すものであり,都市計画負担金や下水道負担金等公共事業に特別の利害関係をもつ者に,事業費の全部または一部を負担させる負担金,公共事業に必要な労役または物品の給付義務を課す労役負担または物品負担,必要な労役の提供または物品の給付か,これに代わる金銭給付のいずれかの選択的義務を課す夫役現品がある。しかし,貨幣経済体制の下では,負担金を除き存在理由に乏しく,負担金もその算定が難しく,十分に活用されているとはいえない。…

【国庫支出金】より

…国が地方公共団体に対し,行政を行うに必要な経費の財源に充てるために支出する支出金のうち,使途が特定されているものをいう。国庫支出金はその性格から補助金負担金,委託金の3種に分類できる。補助金は,国が特定の行政事務の執行を奨励助長するために地方公共団体に交付するものをいう。…

【受益者負担】より

…受益者負担の概念は,財政学的観点からは各種の公共料金,使用料,手数料,負担金,目的税等のすべてを含むものとして理解されているが,法律学では,国または地方公共団体が行う公共事業により特別の利益を受ける者に対して,特別の利益を基準に,それを限度として,その事業費の全部または一部を負担させる目的で課せられる金銭給付義務をいう。受益者負担金ともいう。…

※「負担金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android