ギリシア伝説の女狩人。アルカディアの王子イアソスとクリュメネの娘。生まれたとき,女児を欲しなかった父親によって山中に捨てられ,女神アルテミスの聖獣たる牝熊に育てられた。成人後,有名な狩人となった彼女は,カリュドンの猪狩りに参加,猪に最初の矢を射こんでカリュドンの王子メレアグロスからほうびにその皮を贈られた。その後,両親に再会すると父は彼女を結婚させようとしたが,以前から処女をまもることを誓っていた彼女は,求婚者たちに自分と競走して勝つことを求めた。ただしこの競走には,少し先に走り出した求婚者が,武装してそのあとを追う彼女に追いつかれたときには殺されるという条件が付されていたため,多くの若者が死を遂げた。しかし最後に彼女のいとこにあたるメラニオンMelaniōn(またはヒッポメネスHippomenēs)が,女神アフロディテから与えられた3個の黄金のリンゴをもって競走に臨み,追いつかれそうになると1個ずつリンゴを投げ,彼女がそれを拾う間に決勝点にかけこんだので,ついに彼女は彼の妻となった。のち2人はアフロディテの怒りにふれ,ライオンに変じられたという。アタランテの競走の話はラテン詩人オウィディウスの《転身物語》でよく知られ,17世紀のフランスの画家プッサンの名画を生んだ。また猪狩りにおけるアタランテを語ったものとして,英詩人スウィンバーンの出世作,劇詩《キャリドンのアタランタ》(1865)が名高い。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ギリシア神話の女狩人(かりゅうど)。アルカディアとボイオティアの双方の伝説で語られる。母はクリメネで、父はイアソスまたはマイナロス(ボイオティアではスコイネウス)。アルカディア人の父イアソスは男の子を望んでいたため、彼女は誕生後すぐに捨てられ、猟師に拾われる。アルテミスのように処女を守り、カリドンの猪(いのしし)狩りにも参加するなど狩りを愛したアタランテは、自分を犯そうとした怪物ケンタウロス一族のロイコスとヒライオスを射殺した。また結婚を望まないアタランテは、求婚者に対し自分と競走して勝つことを条件とし、敗れ去った若者を次々と殺した。しかしヒッポメネス(またはメラニオン)は、競走の際に女神アフロディテからもらった3個の黄金のリンゴを次々と投げ、彼女がそれを拾っているすきに追い越して勝ちを得、ついに彼女を妻とした。のちに、2人は狩りの途中ゼウスの神域で交わったので、神によりライオンに変身させられた。なお猪狩りの逸話はスウィンバーンの詩劇『カリドンのアタランタ』に語られている。
[小川正広]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…また争いの女神エリスが〈いちばん美しい女神へ〉といって投げこんだ黄金のリンゴは,三女神(ヘラ,アテナ,アフロディテ)の美の競演をひき起こし,トロイア戦争の遠因となった。駿足の女狩人アタランテとの競走に,黄金のリンゴを投げて時を稼ぐことでこれに勝ち,求婚に成功したメラニオンあるいはヒッポメネスの話もよく知られている。ゲルマン神話には女神イズンの〈若返りのリンゴ〉の話がある。…
※「アタランテ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新