アタランテ(読み)あたらんて(英語表記)Atalantē

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アタランテ」の意味・わかりやすい解説

アタランテ
あたらんて
Atalantē

ギリシア神話の女狩人(かりゅうど)。アルカディアボイオティアの双方の伝説で語られる。母はクリメネで、父はイアソスまたはマイナロス(ボイオティアではスコイネウス)。アルカディア人の父イアソスは男の子を望んでいたため、彼女は誕生後すぐに捨てられ、猟師に拾われる。アルテミスのように処女を守り、カリドンの猪(いのしし)狩りにも参加するなど狩りを愛したアタランテは、自分を犯そうとした怪物ケンタウロス一族のロイコスとヒライオスを射殺した。また結婚を望まないアタランテは、求婚者に対し自分と競走して勝つことを条件とし、敗れ去った若者を次々と殺した。しかしヒッポメネス(またはメラニオン)は、競走の際に女神アフロディテからもらった3個の黄金のリンゴを次々と投げ、彼女がそれを拾っているすきに追い越して勝ちを得、ついに彼女を妻とした。のちに、2人は狩りの途中ゼウスの神域で交わったので、神によりライオンに変身させられた。なお猪狩りの逸話はスウィンバーンの詩劇『カリドンのアタランタ』に語られている。

[小川正広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アタランテ」の意味・わかりやすい解説

アタランテ
Atalante

ギリシア神話の女主人公。イアソスまたはメナロスの娘で,生後すぐに山中に捨てられたが,雌ぐまの乳を与えられているところを狩人たちに発見されて育てられ,無類の駿足をもつ狩りの名手となった。狩猟の女神アルテミスの熱烈な崇拝者であったアタランテは,この女神と同様いつまでも処女でいたいと願い,求婚者には自分と駆け比べをして,もし負ければ首を切るという試練を課したので,大勢の若者がこの競走に敗れて命をなくした。しかし最後にヒッポメネス (メラニオン) がアフロディテから授けられた黄金のりんごを持って彼女に挑戦し,アタランテに追越されそうになるたびにりんごを投げて彼女にそれを拾わせ,ついに競走に勝ったので,彼女は妻になることを承知し,彼の種によりパルテノパイオスを生んだ。だがあるときこの夫婦は,ゼウスの聖域で愛の行為にふけったために神罰を受け,ライオンに変えられてしまったという。

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