アタランテ(その他表記)Atalantē

精選版 日本国語大辞典 「アタランテ」の意味・読み・例文・類語

アタランテ

  1. ( Atalantē ) ギリシア神話の女狩人。並ぶ者のない快足だが計略にかかってメラニオン(またはヒッポメネス)との競走に敗れ、その妻となる。

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改訂新版 世界大百科事典 「アタランテ」の意味・わかりやすい解説

アタランテ
Atalantē

ギリシア伝説の女狩人。アルカディアの王子イアソスとクリュメネの娘。生まれたとき,女児を欲しなかった父親によって山中に捨てられ,女神アルテミスの聖獣たる牝熊に育てられた。成人後,有名な狩人となった彼女は,カリュドンの猪狩りに参加,猪に最初の矢を射こんでカリュドンの王子メレアグロスからほうびにその皮を贈られた。その後,両親に再会すると父は彼女を結婚させようとしたが,以前から処女をまもることを誓っていた彼女は,求婚者たちに自分と競走して勝つことを求めた。ただしこの競走には,少し先に走り出した求婚者が,武装してそのあとを追う彼女に追いつかれたときには殺されるという条件が付されていたため,多くの若者が死を遂げた。しかし最後に彼女のいとこにあたるメラニオンMelaniōn(またはヒッポメネスHippomenēs)が,女神アフロディテから与えられた3個の黄金リンゴをもって競走に臨み,追いつかれそうになると1個ずつリンゴを投げ,彼女がそれを拾う間に決勝点にかけこんだので,ついに彼女は彼の妻となった。のち2人はアフロディテの怒りにふれ,ライオンに変じられたという。アタランテの競走の話はラテン詩人オウィディウスの《転身物語》でよく知られ,17世紀のフランスの画家プッサン名画を生んだ。また猪狩りにおけるアタランテを語ったものとして,英詩人スウィンバーン出世作劇詩《キャリドンのアタランタ》(1865)が名高い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アタランテ」の意味・わかりやすい解説

アタランテ
あたらんて
Atalantē

ギリシア神話の女狩人(かりゅうど)。アルカディアとボイオティアの双方の伝説で語られる。母はクリメネで、父はイアソスまたはマイナロス(ボイオティアではスコイネウス)。アルカディア人の父イアソスは男の子を望んでいたため、彼女は誕生後すぐに捨てられ、猟師に拾われる。アルテミスのように処女を守り、カリドンの猪(いのしし)狩りにも参加するなど狩りを愛したアタランテは、自分を犯そうとした怪物ケンタウロス一族のロイコスとヒライオスを射殺した。また結婚を望まないアタランテは、求婚者に対し自分と競走して勝つことを条件とし、敗れ去った若者を次々と殺した。しかしヒッポメネス(またはメラニオン)は、競走の際に女神アフロディテからもらった3個の黄金のリンゴを次々と投げ、彼女がそれを拾っているすきに追い越して勝ちを得、ついに彼女を妻とした。のちに、2人は狩りの途中ゼウスの神域で交わったので、神によりライオンに変身させられた。なお猪狩りの逸話はスウィンバーンの詩劇『カリドンのアタランタ』に語られている。

[小川正広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アタランテ」の意味・わかりやすい解説

アタランテ
Atalante

ギリシア神話の女主人公。イアソスまたはメナロスの娘で,生後すぐに山中に捨てられたが,雌ぐまの乳を与えられているところを狩人たちに発見されて育てられ,無類の駿足をもつ狩りの名手となった。狩猟の女神アルテミスの熱烈な崇拝者であったアタランテは,この女神と同様いつまでも処女でいたいと願い,求婚者には自分と駆け比べをして,もし負ければ首を切るという試練を課したので,大勢の若者がこの競走に敗れて命をなくした。しかし最後にヒッポメネス (メラニオン) がアフロディテから授けられた黄金のりんごを持って彼女に挑戦し,アタランテに追越されそうになるたびにりんごを投げて彼女にそれを拾わせ,ついに競走に勝ったので,彼女は妻になることを承知し,彼の種によりパルテノパイオスを生んだ。だがあるときこの夫婦は,ゼウスの聖域で愛の行為にふけったために神罰を受け,ライオンに変えられてしまったという。

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百科事典マイペディア 「アタランテ」の意味・わかりやすい解説

アタランテ

ギリシア伝説に登場する駿足の美しい女狩人。カリュドンの猪狩りに参加し,王子メレアグロスからほうびにその皮を贈られた。徒競走で自分に勝つことを求婚者に求め,多くの若者が落命したが,メラニオン(またはヒッポメネス)が3個の黄金のリンゴを投じて時を稼ぎ彼女に勝ち結婚した。のち二人は女神アフロディテに不敬を働いたためライオンに変えられた。オウィディウス,プッサン,ルーベンスらによって作品化されている。

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世界大百科事典(旧版)内のアタランテの言及

【リンゴ(林檎)】より

…また争いの女神エリスが〈いちばん美しい女神へ〉といって投げこんだ黄金のリンゴは,三女神(ヘラ,アテナ,アフロディテ)の美の競演をひき起こし,トロイア戦争の遠因となった。駿足の女狩人アタランテとの競走に,黄金のリンゴを投げて時を稼ぐことでこれに勝ち,求婚に成功したメラニオンあるいはヒッポメネスの話もよく知られている。ゲルマン神話には女神イズンの〈若返りのリンゴ〉の話がある。…

※「アタランテ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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