アトレウスの宝庫(読み)アトレウスノホウコ

デジタル大辞泉 「アトレウスの宝庫」の意味・読み・例文・類語

アトレウス‐の‐ほうこ【アトレウスの宝庫】

Thisauros tou AtreaΘησαυρός του Ατρέαギリシャ、ペロポネソス半島東部にある古代都市遺跡ミケーネにある墳墓。ミケーネにある九つある墓地の一でアガメムノンの墓とも呼ばれる。紀元前13世紀頃のものとされる。高さ約13メートル、直径約15メートルの石積みのドーム状墳墓であり、内壁には貴金属青銅による装飾が施されていたとみられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「アトレウスの宝庫」の意味・わかりやすい解説

アトレウスの宝庫 (アトレウスのほうこ)

ギリシア南部,ミュケナイ城外にある九つのトロス(穹窿墓(きゆうりゆうぼ))のうち,最も保存のよいもの。宝庫と呼ぶのは,かつて財宝が埋められていたとの俗信からであり,また〈アガメムノンの墓〉とも呼ばれるが,もとより確証はない。しかし各地にあるミュケナイ時代同種の墓の典型的なもので,墓は丘の側面につくられ,長さ36mの墓道を進むと,地下の円頂室(穹窿室)の入口に至る。この入口の高さ10.5m。その上にある巨大な楣石(まぐさいし)の上の三角形の空間には,かつて彫刻した石板がはめられていた。円頂室は高さ13.5m,直径14.6m。美しい切石の層をしだいに狭めつつ築きあげること33層で頂点を閉ざす。頂上は少しとがるから,蜂巣状墳ともいう。第3層あたりから上部には青銅製の花形か渦文を散らした鋲跡をみる。ミュケナイ人の工学的才能が生んだ傑作である。しかしこの室は祭室であって,それにつづく高さも幅もほぼ6mの側室が埋葬室である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アトレウスの宝庫」の意味・わかりやすい解説

アトレウスの宝庫
アトレウスのほうこ
Treasury of Atreus

ギリシア,ミケーネのアクロポリスの近くの斜面にある最も代表的なトロス式地下墳墓の一つ。同地の発掘者 H.シュリーマンによって名づけられた。前 1250年頃 (または前 14世紀初期) の建造と推定される。その構造は,手前に長さ 36m,幅 6mの羨道 (えんどう) があり,巨石を積上げた入口を経て巨大なボールト式祭室にいたる。祭室は高さ 13.2m,直径 14.5m,切石を積重ねた蜂巣ボールトをなし,右奥に付属の小墓室がある。この墳墓をアトレウスに帰すことは誤りとされているが,規模の大きさや卓抜した建築構造から,ミケーネ王家のなかでも最も強力な王族の墳墓であったことは疑いない。

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世界大百科事典(旧版)内のアトレウスの宝庫の言及

【ドーム】より

…ドイツ語のドームDomも同様),さらに教会堂のきわだった円屋根を意味するようになった。 建設の歴史は古く,水平に積まれた石層を順次せり出した持送り式ドームの例にミュケナイ時代の遺跡アトレウスの宝庫がある。ローマ時代にはパンテオン(内径43m)に代表される単殻コンクリート造ドームが建設されたが,煉瓦壁とコンクリートによるこの種のドームは基層部に外向きの推力が生じるため,ドームの周囲に沿ってそれを支持する巨大な扶壁(バットレス)を必要とした。…

【墓地】より

…その形状は多数の室を並べたバビロニアの邸宅に近いもので,内部の階段で地下墓室に下りるようになっている。 エーゲ海文明では,ミュケナイ城外のアトレウスの宝庫(前1250ころ)が,切石を積んだ尖頭ドーム型の墓室の前に羨道を設け,土を盛って全体を円墳状に仕立ててある。また,ミュケナイ城内の墳墓(前1500ころ)は,板石で囲んだ直径10mの土地に14個の竪穴を掘り,24体の遺体を金銀の副葬品とともに埋めてあった。…

※「アトレウスの宝庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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