ハムhamともいわれる趣味の一つであるが,国際電気通信条約付属無線通信規則や電波法施行規則によれば,〈金銭上の利益のためでなく,もっぱら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練,通信および技術的研究の業務〉のための無線通信である。世界共通の周波数帯を使って国内国外のアマチュア局と交信し,通信技術の研究を行うほか国際親善につとめている。また,青少年の科学的興味の向上や災害時の非常通信にも役だっている。
無線通信の初期に使われた長波,中波は通信距離が長くなるに従い減衰が大きく,これを克服するには波長のより長い電波を使うか超大電力の送信機が必要であった。無線通信が普及発展するにつれて電波の使用が盛んになり,1900年初めごろから趣味で実験を行っていたアマチュア無線家は,あまり使用価値がないと思われた短波長の電波しか使用が許されなくなった。しかし,アマチュアたちは予見と周到な計画,訓練のもとに短波の有用性を見つけ,23年11月27日小電力送信機による大西洋横断通信を成功させた。こうしたアマチュアたちの功績が広く無線界で認められたことが発端で,その後の周波数分配会議でもアマチュア無線用の電波が確保されている。
日本では25年ごろから東京,大阪,神戸でアマチュア無線活動が始まり,26年6月には38人のメンバーで日本アマチュア無線連盟(JARL)が創立された。法的に認められたのは27年であるが私設無線電信(電話)実験局としてであった。41年の太平洋戦争勃発時には約330局となっていたが電波の発射停止を命じられ,一部は国防無線隊としてしばらく残った。戦後直ちに再開運動が始められ,50年施行の電波法ではアマチュア局という名称が初めて使われ,第1級,第2級のアマチュア無線技士の資格,国家試験の内容も定められたが,実際は52年で30局によるスタートであった。59年には電信級,電話級の初級資格が設けられ,66年からはこれが養成課程講習会の修了試験合格者に与えられることになり爆発的な増加をもたらした。2004年3月末現在,日本のアマチュア無線技士数317万人,局数60万局である。
使用周波数帯には国際電気通信連合(ITU)で定める世界3地域に共通のものと少しずれたものがあるが,1979年の世界無線通信主管庁会議(WARC-79)では10,18,24MHzの短波帯のほか47GHz以上に7周波数帯が新たに分配された。日本では総務省がこれら周波数帯の中から使用周波数帯の割当てを行っている。ただしすべての電波,最高の空中線電力を使えるのは第1級アマチュア無線技士のみで,その他にはそれぞれ制限が課されている。表に日本のアマチュア業務用周波数帯を示す。
アマチュア局を開くには開設申請,予備免許(コールサイン付与),落成検査の手続が必要であるが,空中線電力100W以下の局はJARLの保証認定により落成検査を省略して免許が与えられる。
通信方式としては,短波帯での電信,電話(おもに単側波帯通信方式)通信が根強く残っているが,自作の送信機,受信機によるものは数少なくなり,大半は市販の機器によっている。最近は自動車に設置するものを中心とする超短波帯以上(54-1200MHz帯)の電話通信が盛んである。1961年以来アマチュア無線用通信衛星が打ち上げられ衛星通信も行われているほか,月面反射を利用したEME(earth to moon to earthの略)通信,テレビ(狭帯域テレビのSSTV(slow scan televisionの略)を含む),ラジオテレタイプ,ファクシミリ等々各種の通信が行われている。高いビルや山頂に設置した自動中継器を介して,小電力の携帯型送受信機間で行うリピーター通信が82年から日本でも開始された。そのほかコンピューターと結んだ通信も盛んになりつつある。
アマチュア無線の楽しみは見知らぬ仲間と国の内外を問わず交信ができることであるが,それを自分でくふうした機器によって行うのはなおさらの楽しみである。相互主義により外国人アマチュアにも免許が与えられる。交信した局と交信証(QSLカード)を交換したり,一定時間に多くの局との交信数を競うコンテストへの参加,隠された電波発信源を探し出すフォックス・ハンティングなども人気がある。集めたQSLカードの枚数や国数を競ったり,アマチュア局のない国や無人島で局を運用するDXペディションも熱心に行われている。地震,水害など非常災害時の通信や緊急医療通信にも活躍し社会のためにも役だっている。
世界各国のアマチュア無線団体が加盟している国際アマチュア無線連合(IARU)が組織されており,周波数などの権益の保護,侵入電波の監視,開発途上国への援助などを行っている。ITUの委員会への参加資格を与えられており,地域組織をもって世界3地域特有の問題について討議,決定を行っている。IARUの国際事務局はアメリカ無線中継連盟(ARRL)が引き受けている。
執筆者:小室 圭五
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