日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミア」の意味・わかりやすい解説
アミア
あみあ
bowfin
mudfish
[学] Amia calva
硬骨魚綱アミア目アミア科に属する淡水魚。体は硬鱗(こうりん)で覆われ、頭の下面に1枚の板状の骨(喉板(こうばん))がある。尾鰭(びき)骨格は、軟骨魚類にみられる異尾(いび)型(外見上は上下非対称の形)と多くの硬骨魚類にみられる正尾(せいび)型の中間となる、略式異尾型である。うきぶくろは不完全に左右2室に分かれ、肺の構造をなしている。体色は緑褐色で、暗色の流れ紋がある。雄には尾びれの基底の上部に、黄色から橙(だいだい)色の輪で取り囲まれた明瞭(めいりょう)な眼状斑(はん)があるが、雌には輪がなく、斑紋もはっきりしない。全長は90センチメートル余りで、雌は雄より大きくなる。この類は下等な硬骨魚類であり、古生代から中生代にかけて多くの種類が生存していたが、本種を除くすべての種類が絶滅してしまった。ガーパイク類と近縁であり、ともに「生きた化石」とよばれている。現在では北アメリカの五大湖、ミシシッピ水系に分布し、止水状態で酸素が少なく、濁った所でも生息する。これは肺で空中の酸素を取り込むことができるためである。夏は夜間に盛んに活動し、魚類、両生類、エビ・カニ類、貝類などを貪食(どんしょく)する。冬には水底の泥の中に潜って仮死状態で過ごす。繁殖期は春で、雄は水草が茂った岸辺近くに、長径60センチメートル、短径40センチメートルぐらいの楕円(だえん)形の穴を掘って巣をつくる。巣に近づいた雌の体を吻(ふん)でつつき、巣の中に2万~7万個の卵を産ませる。7~10日ぐらいで卵から孵化(ふか)した仔魚(しぎょ)は、口の前にある吸盤で巣の壁に吸着する。雄は、卵および10センチメートルぐらいに成長するまでの幼魚を保護する。食料にする地域はあるが、市場価値は低い。
[落合 明・尼岡邦夫]