アリノトウグサ(その他表記)Haloragis micrantha R.Br.

改訂新版 世界大百科事典 「アリノトウグサ」の意味・わかりやすい解説

アリノトウグサ
Haloragis micrantha R.Br.

繊弱アリノトウグサ科の多年草で,陽性の草地に生育する。高さ10~30cm,茎は四稜があり赤褐色を帯び,基部は匍匐(ほふく)分枝する。葉は小さく,対生し,茎の上部では互生するようになり,卵形から円形,長さ6~10mm,無毛。円錐花序を頂生し,多数の小さく,帯紫褐色の赤い両性花を各分枝に穂状につける。花は4枚の萼片花弁を有し,萼片は開花後も宿存する。めしべ柱頭は4裂し,淡紅色の毛を密生する。花期は夏。ニュージーランド,オーストラリアからマレーシア熱帯高地を経て,東アジアから日本まで広く分布する。中国では豆弁草,沙生草などと呼ばれ,全草が薬用に利用される。解熱,通便,解毒に効ありという。

 アリノトウグサ科Haloragaceaeは7属約150種あり,フサモのような水草や南半球を中心に隔離的な分布をするグンネラ属などは園芸植物として栽培される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリノトウグサ」の意味・わかりやすい解説

アリノトウグサ
ありのとうぐさ / 蟻塔草
[学] Haloragis micrantha (Thunb.) R.Br.

アリノトウグサ科(APG分類:アリノトウグサ科)の多年草。日当りがよくやや湿った山野の草地に生える。全草無毛で、茎は高さ10~30センチメートル、四角く、基部はよく分枝して地をはい、上部は直立する。葉は対生でほとんど無柄、長さ6~15ミリメートル、幅5~10ミリメートル。縁には数個の鋸歯(きょし)があり、茎の上部では互生する。7~9月、円錐(えんすい)花序をなし、花は小形で下向きに一列につく。萼(がく)はほぼ球形で長さ約1ミリメートル、先端に歯牙(しが)がある。花弁は長楕円(ちょうだえん)形、黄褐色で4枚、萼片の2~2.5倍の長さがあり先端は反り返る。雄しべは8本、葯(やく)は暗紫色。柱頭に淡紅色の毛を密生する。日本全土、東南アジア、オーストラリアに分布。名は、植物体をアリ塚に、花をアリに見立てたものといわれる。

[小林純子 2019年10月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アリノトウグサ」の意味・わかりやすい解説

アリノトウグサ(蟻の塔草)
アリノトウグサ
Haloragis micrantha

アリノトウグサ科の多年草。東アジアおよびオーストラリアの熱帯から温帯に広く分布し,日当りのよい山野の草地に生える。茎はよく分枝し高さ 10~40cmになり,下部は地をはう。葉は対生するが,上部でやや互生する (→葉序 ) 。葉身は革質,卵形または卵円形で長さ6~12mm,幅4~10mm,柄はほとんどない。7~9月,茎の先に小さな花を複総状花序につける。花弁は4枚で紅色または黄褐色。おしべは8本あり,めしべの成熟にやや先立って花粉を放出する。和名は植物体を蟻塚 (蟻の塔) に見立てたものである。

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