日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンダーソン石」の意味・わかりやすい解説
アンダーソン石
あんだーそんせき
andersonite
ウラニルを含むナトリウム(Na)・カルシウム(Ca)の可溶性含水炭酸塩鉱物の一つ。1948年アメリカのアリゾナ州ヤバパイYavapai郡ユーレカEureka地域にあるヒルサイドHillside鉱山の堆積(たいせき)性ウラン鉱床の坑壁面から発見された。そのため始めは、生成に人為的要因が作用したので鉱物ではないという見解もあったが、後に世界各所から確認され、鉱物としての立場が確保された。ウラニルイオンは、[CO3]2-の濃度の高い溶液ではアルカリ性の条件で低温でも高い溶解度を示し、比較的容易に運搬される。
自形はやや平らになった立方体に近い菱(りょう)面体で、微細結晶が溶解と再結晶を繰り返すと、成長したり微細な脈となって母岩の堆積岩中に浸み込む。日本ではリービヒ石liebigite(化学式Ca2(UO2)[CO3]3・11H2O)とともに岐阜県瑞浪(みずなみ)市東濃(とうのう)鉱山の堆積性ウラン鉱床の坑道面に着生したものが知られている。他の共存鉱物には、ベイレイ石bayleyite(Mg2(UO2)[CO3]3・18H2O)、スウォーツ石swartzite(CaMg(UO2)[CO3]3・12H2O)、シュレキンゲル石schröckingerite(NaCa3(UO2)[F|SO4|(CO3)3]・10H2O)、ボルトウッド石boltwoodite(化学式K(UO2)H[SiO4]・1.5H2O)などがある。
同定は可溶性と紫外線での発光による。リービヒ石はわずかに青味を帯びた緑色、本鉱は黄色味を帯びた緑色で、よく見ると区別できる。紫外線下で色の異なった2種類の蛍光が観察されれば、リン酸塩よりも炭酸塩のほうが可能性大。命名は最初にこの鉱物を採集したアメリカ地質調査所の地質学者チャールズ・アルフレッド・アンダースンCharles Alfred Anderson(1902―1990)にちなむ。
[加藤 昭 2015年12月14日]