真空蒸着を進歩させた方法。被処理材の周囲を放電による不活性ガスのプラズマで包んだ状態にして真空蒸着を行うもので,蒸発源からの蒸発金属が放電雰囲気中でイオン化し,印加電圧によって被処理材表面に衝撃的に蒸着する。被処理材は低温においたままで,速い皮膜生成速度で,密着性のよい蒸着膜ができる。また放電雰囲気中での不活性ガスによる散乱作用で,蒸発源からみて陰になる部分にも均一に皮膜をつけることができる。さらに,この放電雰囲気中に蒸発金属とともに反応性ガスを通過させると,反応性ガスも活性化し,窒化チタンTiN,炭化チタンTiC,窒化タンタルTaNのような金属間化合物の蒸着を行うことができる。これを反応性イオンプレーティングという。この方法でできるTiNは,金に近い色調をもち,硬度が高くて傷がつきにくいなどの利点に加え,金めっきよりは安価であるため装飾用めっきとして多用されている。また硬度と耐摩耗性が高いことを利用して,切削工具の先端部の表面処理に多用されている。
被処理材をとりまく放電雰囲気の中に反応性ガスのみを通過させると,これが母材と反応して,表面に窒化物や炭化物の層をつくることができる。これを一般にイオン処理と呼び,目的に応じてイオン窒化,イオン浸炭などという。放電雰囲気内ではイオン衝撃により被処理材表面の酸化物皮膜が除去される(スパッタリング作用)ので,高クロム鋼のように従来の方法では処理困難な材料にも適用できる利点がある。
→浸炭 →窒化
執筆者:増子 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
物理蒸着法(PVD:physical vapor deposition)の一種.原子,分子状態にある蒸気化した物質をイオン化もしくは励起粒子として活性化し,負の高電位にある基板に加速して堆積させることで薄膜を作製する方法.活性化には原則として低ガス圧の領域での弱電離プラズマによる低温プラズマを用いる場合が多く,反応ガスのプラズマを利用して蒸発粒子と結合させ,化合物膜を合成させる反応性イオンプレーティングが一般的である.低い反応温度で結晶性のよい膜が得られるとされる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…これを利用する方法を反応性スパッタリングといい,化合物薄膜形成技術として重要である。 真空蒸着装置中に活性ガスを入れ,直流または高周波電場で放電プラズマを発生させ,蒸発源からの原子をそのプラズマをくぐらせて蒸着すると,原子は励起またはイオン化され,反応性が促進され良質の化合物薄膜が形成される(イオンプレーティングion plating)。プラズマでなく,加速電子で励起,イオン化する方法は,ホロー陰極放電法と呼ばれる。…
…結晶中の原子の幾何学的な配列の様式を結晶構造という。分子も原子の集りによって幾何学的に構成され,分子構造をもつから,分子性結晶では,ある構造をもった分子が集まって,結晶構造という別の構造を幾何学的に構成していることになる。結晶の基本的な性質は,その結晶構造に依存している。したがって,結晶構造についての詳細な知識は結晶の物理的性質の研究に重要であるばかりでなく,必要とする物性をもった結晶を合成する指針ともなりうる。…
…これを利用する方法を反応性スパッタリングといい,化合物薄膜形成技術として重要である。 真空蒸着装置中に活性ガスを入れ,直流または高周波電場で放電プラズマを発生させ,蒸発源からの原子をそのプラズマをくぐらせて蒸着すると,原子は励起またはイオン化され,反応性が促進され良質の化合物薄膜が形成される(イオンプレーティングion plating)。プラズマでなく,加速電子で励起,イオン化する方法は,ホロー陰極放電法と呼ばれる。…
※「イオンプレーティング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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