イカリムシ(読み)いかりむし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イカリムシ」の意味・わかりやすい解説

イカリムシ
Lernaea cyprinacea

顎脚綱ウオジラミ目イカリムシ科 Lernaeidaeの淡水産寄生動物。体長 7~9mm。体は棒状で,無色ないし淡黄緑色。ウナギコイフナキンギョメダカなどの淡水魚の体表や,口腔に寄生する。自由生活をしていた幼虫が成熟して交尾をすると,雄は死ぬが,雌は宿主である淡水魚にとりつく。雌の体は棒状に変態し,頭胸部に 2対の錨(いかり)状の突起が発達する。この突起を宿主の体内に侵入させ,終生宿主にとりついたままの状態でいる。アジアからヨーロッパにかけて広く分布し,養魚上の大敵。イカリムシ科には海産魚に寄生する種が多く,いずれも形態的に特殊化している。(→顎脚類甲殻類節足動物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イカリムシ」の意味・わかりやすい解説

イカリムシ
いかりむし / 錨虫
[学] Lernaea cyprinacea

節足動物門甲殻綱ウオジラミ目イカリムシ科に属する水生小動物。ウナギ、コイ、フナ、キンギョなど淡水魚の体表やえら、口腔(こうこう)などに寄生する。ヨーロッパからアジアにかけて広く分布し、近縁種が約50種知られている。体は長さ7~9ミリメートルの棒状で、半透明ないし淡黄緑色を帯びる。雌の頭部が変形して錨(いかり)に似たような2対の突起をもち、それを宿主の体内に挿入して固着し、寄生生活をする。胸部も細長く伸び、終生宿主から離れることはない。卵嚢(らんのう)は紡錘形で、内部に球形の卵が多数収められている。孵化(ふか)したノープリウス幼生は自由生活をしたのちに魚の体表につき、宿主の体液を吸収しながら脱皮、成長する。成熟して交尾すると雄は死んでしまうが、雌は変形して固着生活を続けるという複雑な生活史をもっている。

 外見は甲殻類とは思えない姿であるが、基本的な形はよく残っており、糸状の第1、第2触角のほか、第1から第3顎脚(がっきゃく)や4対の胸肢(きょうし)などが認められる。

[武田正倫]


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