改訂新版 世界大百科事典 「イシガケチョウ」の意味・わかりやすい解説
イシガケチョウ
Cyrestis thyodamas
鱗翅目タテハチョウ科に属する中型のチョウ。イシガキチョウともいう。縦長の翅のため開張は5~6cmと小さい。和名は石崖(石垣)に似た翅の模様に由来し,英名は翅の縦条を経線に,翅脈を緯線に見たててマップ・ウィング・バタフライmap-wing butterflyという。南方系の種で,本州の三重県あたりが分布の北限となっており,国外ではインドから中国南部まで広く分布している。年3~5回発生し,成虫で越冬する。雌はやや大型で,地色が白色と黄色の2型あるが雄は白い地色のみである。幼虫はクワ科のイヌビワをおもな食樹とし,まれにイチジクにもつく。沖縄などではそのほかガジュマル,アコウなども食べる。幼虫は葉から白い汁液が出ないよう,葉脈をかみ切ってから葉を食べる習性がある。幼虫,さなぎとも頭に長い角がある。成虫は花にくるが,雄は好んで吸水する。飛び方は紙片が風に舞うようで,しばしばガのように翅を広げたまま葉裏にとまる。また,生きている成虫の複眼は黒い線で上下に明りょうに二分されているなど,タテハチョウ類の変り種である。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報