改訂新版 世界大百科事典 「イブキヌカボ」の意味・わかりやすい解説
イブキヌカボ
wood millet grass
wild millet grass
Milium effusum L.
山地の林下や草原に生えるイネ科の細長い多年草で,和名は伊吹糠穂で滋賀県伊吹山のヌカボの意味だが,ヌカボよりスズメノテッポウなどにより近縁のものである。全体に鮮緑色で軟らかい。茎は直立して枝分れせず,高さは80cm前後である。葉は線状披針形で,淡緑色,長さ15cmくらい,幅は1.5cmに達し,先は鈍い。夏に向かって茎の頂に長さ15cmほどのまばらな円錐花序を出し,その中軸に糸状の枝がやや垂れぎみに輪生し,その先端に数個の小穂をつける。小穂は白っぽい緑色で,球形,長さは3mmくらい。小花の花穎(かえい)がやや草質で光沢があり,熟して黄ばみ,ヒエのような感じになる。北半球の温帯,亜寒帯全体に分布する。日本では北海道の低地から九州の山地に生える。シベリアでは植物体は麦わら帽子の編料に使用し,牧草にも用いられることがある。穎果は中国やシベリアで鳥の飼料にする。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報