改訂新版 世界大百科事典 「イボイモリ」の意味・わかりやすい解説
イボイモリ
ribbed newt
crocodile salamander
Tylototriton andersoni
別名トゲイモリ。両生綱イモリ科のうちではもっとも原始的な仲間とされるイボイモリ属の1種。奄美大島,徳之島,沖縄本島,渡嘉敷島に分布する南西諸島中央部の固有種。同属には全長20cmのミナミイボイモリT.verrucocusなど5種が,中国南部,海南島からタイ北部,ヒマラヤ東部に分布するが,化石種はヨーロッパの第三紀に見つかっており,現在の不規則な分布は繁栄時代の遺存種と考えられている。イボイモリは全長16cm前後,頭部は扁平で幅広く,胴の背中線が隆起して尾の背稜に続いている。肋骨が大きく張り出して先端がとがり,自衛手段としてこれを広げる。肋骨の上側は鋸歯状の隆条となり,いぼ状の突起が並んでいる。全身が紫がかった黒褐色で,四肢の指先と尾の下面はオレンジ色。森林や周辺部の耕地にすみ昼間は落葉や倒木の下に潜む。早春から初夏にかけて,水辺の落葉や腐植土の中に1~2個ずつの卵包を合計20~30個ほど産む。孵化(ふか)した幼生は自力で水に到達したもののみ発生を続ける。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報