セミクジラ(読み)せみくじら(英語表記)right whale

翻訳|right whale

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セミクジラ」の意味・わかりやすい解説

セミクジラ
Eubalaena glacialis; northern right whale

クジラヒゲクジラ亜目セミクジラ科セミクジラ属。体長 17~18m。体重 80~100t。出生体長 4.5~6m。全身黒色を呈するが,部分的に白斑がみられるものがある。頭部が著しく大きく体長の3分の1に達する。下顎の上縁が大きく弓状にせり上がっているために頭部上面から観察できる。上顎と下顎にはかさぶた状になった角質層の盛上がりがみられ,個体によってその数や形状が異なるので,個体識別に用いられている。胸鰭 (むなびれ) と尾鰭は大きく,背鰭はない。噴気孔は2個で,左右に離れているために噴気がV字状に 5m近く吹上がる。口内の上顎上面に片側 200~270枚のくじらひげを有し,なかには長さ 3mに達するものもある。ひげの板状部および繊毛部は茶灰色あるいは黒色。開いた口の正面から海水を取込みくじらひげでこし取るようにして,おもに浮遊性甲殻類のカラヌス類を捕食している。遊泳速度が遅く,動作が比較的緩慢である。出産期は冬~春で,繁殖場は熱帯あるいは亜熱帯域。温帯から亜寒帯収束水域にかけて生息する。皮下に厚い脂肪層を有するために鯨油採取の目的から 11世紀頃より捕獲対象となり,現存数が激減したため 1936年に全面捕獲禁止となる。絶滅危惧種

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セミクジラ」の意味・わかりやすい解説

セミクジラ
せみくじら / 背美鯨
right whale
black right whale
[学] Eubalaena glacialis

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目セミクジラ科のヒゲクジラ。体長15~18メートルであるが肥満型で、体重は100トンに近いものもある。北大西洋と北太平洋の温暖な海に生息する。南半球にいるものは、本種の亜種または別種と思われる。全身黒色で腹部に白斑(はくはん)のあるものもある。頭部は大きく、体長の約4分の1を占めている。背びれはなく、畝(うね)もない。吻(ふん)の上面と下顎(かがく)の縁に、表皮の変形してできた角質の隆起物が散在する。そのうち吻端付近のものをボンネットという。口の中には片側に250枚内外の長いくじらひげがあり、これで浮遊性のカラヌスを漉(こ)して食べる。19世紀には全世界の温暖な海洋において捕鯨帆船で多獲され、日本では江戸時代に、南は三重県から高知県まで、日本海側では山口県から長崎県にかけて、網取式捕鯨で捕獲された。現在は国際捕鯨条約により捕獲が禁止されている。

[大村秀雄]


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