改訂新版 世界大百科事典 「ウィンスタンリー」の意味・わかりやすい解説
ウィンスタンリー
Gerrard Winstanley
生没年:1609-?
イギリスの思想家。ランカシャーの織物商の子として生まれた。イギリス革命のさいにロンドンで破産し,サリー州で田園生活を送っていたとき神の啓示を受け,その神秘的な宗教体験をもとにして神学の著作を出版する。人類の歴史を,神・光・理性による人間・闇・利己心の救いの過程としてとらえ,私有財産の起源を人間の貪欲に求め,その結果としての不平等と抑圧の克服を,〈愛と正義の共同体〉に見いだした。この理想を実現するために,1649年4月,貧農を率いてディガーズの運動を開始し,土地の共有と賃労働関係の廃止を宣言した。地主の妨害を受け,軍隊の弾圧で1年ほどで挫折したのち,社会主義ユートピアを構想して《自由の法》(1652)を出版した。それは近代的合理的な社会主義の先駆とみなされているが,失われた古代の自由にあこがれる側面もあり,彼の思想には神秘主義的傾向が合理主義的なものと融合・混在している。
執筆者:田村 秀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報