ウィンスタンリー(英語表記)Gerrard Winstanley

改訂新版 世界大百科事典 「ウィンスタンリー」の意味・わかりやすい解説

ウィンスタンリー
Gerrard Winstanley
生没年:1609-?

イギリスの思想家。ランカシャーの織物商の子として生まれた。イギリス革命のさいにロンドンで破産し,サリー州で田園生活を送っていたとき神の啓示を受け,その神秘的な宗教体験をもとにして神学著作を出版する。人類の歴史を,神・光・理性による人間・闇・利己心の救いの過程としてとらえ,私有財産起源を人間の貪欲に求め,その結果としての不平等と抑圧の克服を,〈愛と正義の共同体〉に見いだした。この理想を実現するために,1649年4月,貧農を率いてディガーズ運動を開始し,土地の共有と賃労働関係の廃止を宣言した。地主妨害を受け,軍隊弾圧で1年ほどで挫折したのち,社会主義ユートピアを構想して《自由の法》(1652)を出版した。それは近代的合理的な社会主義の先駆とみなされているが,失われた古代の自由にあこがれる側面もあり,彼の思想には神秘主義的傾向が合理主義的なものと融合・混在している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィンスタンリー」の意味・わかりやすい解説

ウィンスタンリー
うぃんすたんりー
Gerrard Winstanley
(1609―1676)

ピューリタン革命期の急進的政治思想家。織物商の子としてランカシャーのウィガンに生まれた。1648年、最初パンフレットを発表して神秘主義的立場を明らかにしたのち、しだいに政治的色彩を強め、翌1649年4月1日、貧民を率いてサリー州の共有地を開墾し始めるに至った。ディガーズの運動とよばれたこの運動は厳しく弾圧されたが、彼のユートピア思想は、のちに社会主義の先駆と評価されるようになった。(書籍版 1985年)
[小泉 徹]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウィンスタンリー」の意味・わかりやすい解説

ウィンスタンリー
Winstanley, Gerrard

[生]1609. ランカシャー
[没]1660以後
イギリス,清教徒革命期における最左翼党派ディッガーズの指導者。 1630年ロンドンに出て毛織物商の徒弟になったが成功せず,43年サリー州に移る。 49年同州のセントジョージ丘で仲間と共同耕作を始めたが,翌年弾圧された。共同労働による,貧困も搾取もない社会の建設を説き,多くのパンフレットを発表した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ウィンスタンリー」の解説

ウィンスタンリー
Gerrard Winstanley

1609頃~60頃

ピューリタン革命におけるディガーズの指導者。前歴は不詳。運動が弾圧されたのち,多くのパンフレットを書いたが,その思想は一種の社会主義的ユートピアの構想を持つものとして注目される。晩年はクエーカーになったといわれる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ウィンスタンリー」の解説

ウィンスタンリー
Gerrard Winstanley

1609〜52
イギリスの社会改良家。ピューリタン革命期のディッガーズ運動の指導者
没落した貧農を救うため,原始キリスト教的神秘思想から,共有地の共同耕作を行ったが,議会や軍隊の弾圧を受けた。晩年の著作には社会主義理論の萌芽がみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のウィンスタンリーの言及

【ユートピア】より

…J.V.アンドレーエ《クリスティアノポリス(キリスト教都市)》(1619),S.ゴット《新エルサレム》(1648)が代表例。最も秘教的・セクト的傾向が明らかなのは,ピューリタン革命期のディガーズの指導者G.ウィンスタンリーによる《自由の法》(1652)であり,強い求道的イメージで貫かれている。実際,16世紀の宗教改革以降,ことに改革派のなかには,強度な抑圧に抗して宗派共同体を建設し,ここに純粋な理想社会を実現しようとするユートピア運動が頻発した。…

※「ウィンスタンリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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