オランダの生理学者、栄養学者、細菌学者。アムステルダム大学を出て、神経生理学を専攻し、1883年オランダ領東インドに渡る。一時帰国して細菌学を研究したが、1886年脚気(かっけ)対策使節団の一員として、ふたたびオランダ領東インドに渡り、バタビアの病理学研究所長、医学校校長となる。ニワトリを白米で飼育すると脚気症状をおこすが、これに糠(ぬか)を混ぜたり、玄米を与えると、症状が軽快することをみいだし、また囚人で白米食群と玄米食群を比較し、前者に脚気が多発することを認めた。ヒトとニワトリの脚気がいずれも白米による多発性神経炎であることから、それまでの脚気細菌感染説を否定し、毒素説を提唱した。しかし、門弟フレーンスGerrit Grijns(1865―1944)の、米糠の中の必要栄養素証明により、脚気栄養素説となった。1929年、「抗神経炎ビタミンの発見」によりノーベル医学生理学賞を受け(「成長刺激ビタミン」を発見したF・G・ホプキンズとの同時受賞)、1889年より1928年までユトレヒト大学教授として、衛生学、法医学、細菌学を講じた。
[古川 明]
オランダの薬学者。明治初期のお雇い外国人教師。州学校長を父にヘルデルラントに生まれる。ライデン大学出身。薬学博士。1877年(明治10)日本政府の招きで長崎司薬場薬品試験監督に来任、のち東京司薬場に移った。当時不明であった脚気(かっけ)の病因を食事にあるとし、常用食品の化学分析を指導して食品衛生の領域を開発した。司薬場満期後、東京帝国大学薬学教授となり、多くの日本植物の成分研究を行い、とくにケシ科の新アルカロイド、マクレインの元素分析に成功し、著書を出版して日本植物の研究者としての名を高めた。『日本薬局方』第1版編纂(へんさん)への貢献度もきわめて高い。1885年帰国に際し明治天皇に拝謁、勲四等を賜る。帰国後アムステルダム大学教授。『日本薬局方註解(ちゅうかい)』は、エイクマンが編纂した原文を翻訳刊行したものである。
[根本曽代子]
オランダの医学者。ネイケルクに生まれ,アムステルダムで医学を修め,1886年脚気調査団に参加してオランダ領東インド諸島に渡り,88年バタビアに新設された病理学研究所長に就任。細菌学興隆の時代を背景に脚気の病原体発見に努力したが成果なく,96年なかば偶然に脚気の原因を解明した。精白米で飼育されたニワトリが人間の脚気に似た多発性神経炎による麻痺を起こし,米ぬかを与えるとすぐ治ることを発見,米ぬか中に微量必須の栄養素が存在することを確認してビタミンB1発見の端緒をつかんだ。帰国してユトレヒト大学衛生学教授となる。1929年イギリスのF.G.ホプキンズとともにノーベル生理・医学賞を受賞。
執筆者:本田 一二
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オランダの生理学者.1883年アムステルダム大学で医学博士号を取得.E. ForsterやH.H.R. Kochのもとで細菌学を学んだ後,オランダ政府の脚気調査団の一員として東インド諸島に赴任し,脚気の病原菌発見をめざした(1886年).2年後にジャワ医学校長に就任し,熱帯医学研究に従事.その間,白米を与えたニワトリが脚気様症状を示し,かつ米ぬかを与えると症状が改善されることを明らかにした(1897年).この研究は,ビタミン概念とビタミン B1 の発見へつながる.この業績で,1929年F.G. Hopkins(ホプキンス)とともにノーベル生理学・医学賞を受賞.ただし,かれは白米に含まれる毒素が脚気の原因で,米ぬか中に解毒物質があると考えていた.1901年G. Grijnsが米ぬか中の未知の栄養素の欠乏が原因であると主張し,かれものちにそれを認めた.1896年に帰国して,ユトレヒト大学教授となる(1898~1928年).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
(長門谷洋治)
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…そこで,この実験的事実に基づき,海軍の兵食改革をして脚気患者を激減させることに成功した。 一方,バタビア(ジャカルタ)の病理研究所長であったオランダのC.エイクマンは,96年白米で飼育したニワトリが脚気様症状を呈し,米ぬかを加えると症状が改善することを発見した。このような現象は他の鳥類にもみられるところから〈鳥類白米病〉と呼ばれたが,彼は原因は白米中の毒素によるものと考えたが,弟子のグリーンスG.Grijnsは,米ぬかに未知の必須栄養素を含んでいるためと主張,1906年にエイクマンはこれを認め,白米がこの必須栄養素を欠くためだと推定した。…
※「エイクマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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