エジプト暦(読み)エジプトれき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エジプト暦」の意味・わかりやすい解説

エジプト暦
エジプトれき

古代エジプトにおいて,は人々の生活,あるいは人間の行為の宗教的意味づけに重要な役割をもっていた。初期エジプトでは太陰暦を用いていた形跡もみられるが,農業に密接な関係のあるナイル川増水の時期を,恒星シリウス日の出前に初めて現れるときで予測するようになり,そこから洪水と洪水の間を1年の単位とし,365日と数えるにいたった。またグノモンという柱を用いた太陽による観測法も行われ,これらの基礎のうえに太陽暦が使用されるようになった。それは前 4241 (一説に前 2781) 年頃に成立し,年の始りは7月中旬とされた。1日は昼夜各 12時間から成り,1ヵ月は 30日で 10日ずつ3期に分けられる。1年は 12ヵ月,360日とオシリスホルスセトイシスネフテュスの5神の誕生日を祭日として都合 365日とした。また1年は4ヵ月ずつ3季節に分けられ,第1の季節はシャイト (洪水) ,第2はピリト (種まき) ,第3はシェムウ (収穫) と呼ばれた。前 238年にプトレマイオス3世は,4年ごとに閏年をおく法を定めたが,実施されたのは,ローマ時代にユリウス暦が制定されたときからであった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エジプト暦」の意味・わかりやすい解説

エジプト暦
えじぷとれき

古代エジプトで行われた暦。世界各地で暦法が発生した初期の時代、その多くが太陰暦法であったと考えられるが、ひとりエジプトでは太陽暦法であった。初めは1年を12か月、1か月を30日、1年を360日としたが、紀元前20世紀ごろから365日の移動年(年始が年ごとに移動する)とし、30日ずつの月12か月に5日の余日を最後に付加する太陽暦法であった。そしてこれを洪水、種蒔(たねまき)、収穫の3季に分け、各季を4か月とした。

 エジプトではシリウス(おおいぬ座α(アルファ)星)が日の出の直前に東天に昇るころの一定時期に、ナイル川が氾濫(はんらん)し、農業や生活に重大な影響を与えた。そのためシリウスの日の出直前の出現を予知する必要から1年365.25日を知り、シリウスの出現の日は元日とされた。この1年をシリウス年とよぶ。しかしエジプト暦では、年は移動年であるから、季節はしだいにずれていく。1461暦年は1460シリウス年に等しく、季節は1461移動年で元に戻る。この周期シリウス周期とよぶ。前238年にプトレマイオス3世(在位前246~前221)は4年ごとに1日を歳末に加えるよう法令を出したが、実際には行われなかった。古代エジプト人の子孫であるコプト人の間で使用されたコプト暦は、エジプトと同じ太陽暦で、エチオピアでも用いられた。

[渡辺敏夫]

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