アメリカの作家ジョン・スタインベックの長編小説。1952年刊。「創世記」の骨肉の争いを踏まえ、トラスク家3代の歴史をたどり、人間に潜む原罪と救いの可能性を追う。罪を負って神の前を去り、エデンの東に住まなければならなかったカインの末裔(まつえい)には救いが残されているか、それとも自由意志の余地は永遠に閉ざされているのか。この主題と交錯し、作者の一族ハミルトン家の歴史も語られ、「個人のさまよい求め歩く心」に人間の救いと価値をみいだそうとする。
[稲澤秀夫]
アメリカ映画。監督エリア・カザン。1955年作品。ジョン・スタインベックの同名長編小説の映画化作品。カザンは、モスクワ芸術座の演出家コンスタンチン・スタニスラフスキーの演技理論の影響を大きく受け、アクターズ・スタジオを創設してハリウッドに「メソッド」演技法を広めた。これは形式化、様式化されていた従来の演技ではなく、登場人物の精神的内面を感情豊かに表現する演技を求めるメソッド。主演は、そのアクターズ・スタジオで「メソッド」を習得した俳優の一人ジェームス・ディーン。役柄の内面心理を探求し、俳優自身と役とが融合された、表現力豊かでリアリティあふれる文学的な演技をみせている。ディーンを新しい個性的な性格スター俳優へと押し上げた作品の一つ。新しい個性と演技が、当時映画の興行収入を支えていた若者たちに大いに受け入れられた。1955年、アカデミー助演女優賞受賞。1955年(昭和30)日本公開。
[堤龍一郎]
『野崎孝・大橋健三郎訳『エデンの東』(ハヤカワ文庫)』
…ごうごうたる賛否両論の渦まく中でピュリッツァー賞を授与され,彼の名を国際的にも高からしめた代表作《怒りの葡萄》(1939)も,貧窮農民の共闘の様を伝える迫真的描写の底から,彼らをも包摂して動いてゆくアメリカ社会と人類全体の永遠の歩みに信頼を寄せる作者の楽天的人間観と生命賛歌が聞こえてくる。《月は沈みぬ》(1942)に始まる第2次大戦後の彼の文学的営為に対しては,その衰退を指摘するのが一般であるが,南北戦争から第1次大戦に至るアメリカ社会の変遷に自身の家系を絡め,原罪意識からの人間解放を旧約聖書の物語に託して語ろうとした大作《エデンの東》(1952。ジェームズ・ディーンの登場で評判を呼んだエリア・カザン監督の同名の映画はこの第4部に基づく),1962年度ノーベル文学賞授与の契機となった《われらが不満の冬》(1961)など,不評に抗する意欲は熾烈であった。…
…インディアナ州マリオンに生まれ,55年カリフォルニア州で愛用のポルシェ・スピードスターを運転中,事故死した。 アクターズ・ステュディオなどで演技を学び,舞台,テレビドラマをへて,エリア・カザン監督により《エデンの東》(1955)の主役に抜擢(ばつてき)され,〈新しいマーロン・ブランド〉と宣伝されて映画が公開される前にすでにスターとなった。つづいてニコラス・レイ監督の《理由なき反抗》(1955)に主演し,さらにジョージ・スティーブンス監督の《ジャイアンツ》(1956)に出演したが,その完成前に世を去った。…
※「エデンの東」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新