改訂新版 世界大百科事典 「オオミヤシ」の意味・わかりやすい解説
オオミヤシ
double coconut
sea coconut
Lodoicea maldivica Pers.
世界最大の種子を生じることで有名なヤシ科の高木。ウミヤシとも呼び,またその特異な種子の形からフタゴヤシあるいはダブルココナッツの名もある。インド洋セーシェル諸島の原産で,1属1種である。幹は高さ30m,直径40cmに達し,基部はふくれる。葉は掌状で倒卵状ひし形,長さ4~7m,幅2~4m,浅裂し,裂片は長さ30~40cmで扇形をなし,先端は2中裂する。毎年1葉を出すという。花は雌雄異株。肉穂花序は腋生(えきせい)で長さ約1m。果実は卵円形で牛の陰囊に似て幅35~45cm,重さ10~20kg,成熟に6年かかり,発芽に3年かかる。材を用材,果実を置物,内果皮を容器,古葉は屋根ふき用とする。ゼラチン状の胚乳は美味で,セーシェル諸島民の好物の一つとなっている。この巨大なヤシについては,F.マゼランの世界周航に同行し,記録を残したA.ピガフェッタが1519年に原住民パイロットの話としてふれている。その巨大な種子については,16世紀にインドに渡航したポルトガル人によって言及され,1611年,インド洋のモルジブ島の海岸に漂着したものをピラードPyrardという人が発見したので,しばらくはモルジブ島産と信じられた。昔は本種の実は法外な値で取引されていたが,1743年にセーシェル諸島で生育地が発見され,珍品ではなくなった。しかし最近でもこのヤシは島の重要な収入源となっている。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報