日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオミヤシ」の意味・わかりやすい解説
オオミヤシ
おおみやし
Seychelles palm 英語
coco de mer フランス語
[学] Lodoicea maldivica Pers.
ヤシ科(APG分類:ヤシ科)オウギヤシ亜科オオミヤシ属、1属1種のヤシ。インド洋西部セイシェルSeychelles諸島のプララン島特産で、約2000本が群生する。幹は単幹で直立し、高さ30メートル以下、径30~40センチメートル、幹肌に波状の環紋がある。葉は掌状葉で光沢のある緑色。1葉が出終わるのに2年を要する。小葉は長さ4~6メートル、幅3~4メートル、葉柄は長く、掌状の着生部は羽状に積み重なる。小葉裂片は披針(ひしん)形で40~50枚ある。雌雄異株。雄花は1~2メートルの褐色棒状の花序に多数のつぼみを没入状に散生し、長期にわたり少数ずつ露出して開花する。雌花は径13センチメートルの球形。ジグザグ状で軸径10センチメートルの花軸に数個のつぼみをつけ、無光沢黒褐色の萼(がく)に包まれる。そのうちの1個だけが成長し、成熟には7~8年を要する。果実は光沢の強い暗緑色で扁楕円(へんだえん)形。長さ45センチメートル、幅30センチメートル、厚さ25センチメートル、重さ30キログラムが標準。果実の中果皮は1年で完熟果大に成長するが、内果皮の完熟には7~8年かかる。種子は黒褐色、扁楕円形。長さ38センチメートル、幅35センチメートル、厚さ20センチメートルが標準。頂部から深入した溝になり、その底部(種子の上部)に胚(はい)がある。植物界最大の種子で、樹齢はヤシ科植物中最長で、雌は500年、雄は1000年といわれる。ヤシの代表的珍種で、double coconutからフタゴヤシの和名もある。栽培は多湿、30℃以上を要し、土壌は花崗岩(かこうがん)土壌がよい。
[佐竹利彦 2019年4月16日]