改訂新版 世界大百科事典 「オサガメ」の意味・わかりやすい解説
オサガメ
leatherback turtle
Dermochelys coriacea
現生のカメ類では最大で,特殊な甲をもつウミガメ。別名革ガメ1種だけでオサガメ科Dermochelyidaeを形成する。甲長の最大2m,体重650~800kgで1tに達する個体もあり,陸生を含めたカメ類の最大種。世界の熱帯,亜熱帯の海域に広く分布し,日本を含む温帯の沿岸にも接近する。外洋性でウミガメ類中もっとも遊泳力が優れ,体の構造もそのようにできている。すなわち,甲は多数の小骨片の集合からなり,弾力性のある皮膚内に埋もれており,背甲と腹甲とは連結がない。鱗板は幼体には存在するが成体ではこれを欠き,滑らかな皮膚に7本の隆条が走っている。したがって甲が軽く造波抵抗が少ないため,外洋を高速で泳ぎ,他のウミガメのようにフジツボや海藻が甲に付着することがない。しかし体重を支える力が甲になく,砂浜に上陸して産卵するのは困難な仕事となる。3~7月ごろに一度に60~150個ほどの卵を産み,約7週間で孵化(ふか)する。餌はクラゲ,サルパ,カメガイなどの軟らかい生物。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報