オシロイバナ(その他表記)marvel-of-Peru
Mirabilis jalapa L.

改訂新版 世界大百科事典 「オシロイバナ」の意味・わかりやすい解説

オシロイバナ
marvel-of-Peru
Mirabilis jalapa L.

夏の夕方に開くので夕化粧(ゆうげしよう)の名でも知られている熱帯アメリカ原産のオシロイバナ科多年草。夕方に開花し,香りも最も強くなるため,イギリスではfour-o'clock(午後4時)と呼ばれる。渡来は古く1694年(元禄7)の貝原益軒の《花譜》やその他の古書にも記録がある。草丈は約1m,茎は節々でふくれやや多肉,多数の枝を分けてその先の集散花序に花をつける。花色は紅,ピンク,白,黄などさまざまで,絞りもあり,1本で2~3色に咲き分けるものもある。花は花筒が長く漏斗形であるが,これは萼片で,花をつつみ萼に見えるのは苞である。ときおり苞が花弁のように着色するフタエオシロイバナvar.dichlamydomorpha Makinoも栽培されている。開花後,黒色果実ができるが,種皮は堅く中にある胚乳は白く粉状なので,子どもはおしろいとして遊び,オシロイバナの名がある。こぼれ種が毎春,発芽して育つほど丈夫であるが,新しく育てるには4月まきとする。暖地では多肉質の根が残り,これが翌年に育ち,場所によっては高さ2mにものびて花をつけるので,玄関先などに植えるとおもしろい。

 花が夜咲性であるから,庭や花壇に夜間照明をしたり,レストランビヤホールなどの中庭などに植えて,夜,観賞するのもよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オシロイバナ」の意味・わかりやすい解説

オシロイバナ
おしろいばな / 白粉花
[学] Mirabilis jalapa L.

オシロイバナ科(APG分類:オシロイバナ科)の多年草。熱帯アメリカ原産。根は太い直根で、茎も太く、分枝して草丈は1メートルに達する。葉は三角状卵形で先がとがり、対生する。花は花冠がなく、筒状の萼(がく)に色がついてアサガオの花のように開く。花の基部には萼のようにみえる緑色の総包葉がある。園芸種には紅、白、桃、黄、絞りなどの花色があり、夏から秋にかけて咲き続ける。夕方から開花し、日中はしぼむのでfour-o'clockの英名がつけられている。種子は黒く、割ると白粉質の胚乳(はいにゅう)がある。栽培は、春播(はるま)きにすれば夏には開花するので、一年草同様に扱う。暖地ならば塊根状の根が越冬し、翌年も生育、開花する。

[神田敬二 2021年2月17日]

 オシロイバナを最初に記載したのはフランス生まれのオランダの植物学者クラシウスCarolus Clusius(フランス名)(1526―1609)で、1576年ごろにペルー産としてアドミラビリス・ペルビアナAdmirabilis peruvianaの名を与えた。中国へは16世紀末までに渡り、日本へは元禄(げんろく)時代(1688~1704)に江戸に伝わった。貝原益軒(かいばらえきけん)の『花譜(かふ)』(1695)には赤花と黄花があがる。江戸時代、種子はおしろいの代用に、根は葯剌巴(やーらっぱ)の名で蘭薬(らんやく)に使われた。ブラジルでは全草を腹痛や下痢、根を下痢や水腫(すいしゅ)の民間薬に利用する。

[湯浅浩史 2021年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オシロイバナ」の意味・わかりやすい解説

オシロイバナ(白粉花)
オシロイバナ
Mirabilis jalapa; fouro'clock

オシロイバナ科の多年草。寒さに弱く,冬季地上部分は枯れ,春新しい芽が出ることが多い。南アメリカ原産で,250年以上も前に日本に渡来したといわれる。緑色の茎は軟らかく,節がふくれている。長さ5~10cm,卵形の葉が対生する。夏から秋にかけて,赤,黄,白,絞りなどのらっぱ状の花を多数枝先につける。花弁のようにみえるのは萼で,花弁はない。花は夕方開き,翌朝にはしおれる。そのため夕化粧の別名もある。球形の果実は基部を萼に包まれ,黒く熟する。種子は硬く内部の胚乳部分は白い粉状でこれを白粉にたとえた。草花として庭や花壇などに植えられるが,また野生状態のものもある。遺伝学の研究に用いられたので有名である。

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百科事典マイペディア 「オシロイバナ」の意味・わかりやすい解説

オシロイバナ

熱帯アメリカ原産のオシロイバナ科の多年草。花壇の群植,鉢植に適する。草たけ1m内外で,3〜6花の集散花序をつける。花は芳香があり,漏斗(ろうと)形で色彩に変化が多く,咲分け,斑入(ふいり)葉品種もある。開花期は7〜10月で,夕方咲き出す。種子は黒色で,割ると白粉(おしろい)状の胚乳がある。

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