オシロイバナ(読み)おしろいばな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オシロイバナ」の意味・わかりやすい解説

オシロイバナ
おしろいばな / 白粉花
[学] Mirabilis jalapa L.

オシロイバナ科(APG分類:オシロイバナ科)の多年草。熱帯アメリカ原産。根は太い直根で、茎も太く、分枝して草丈は1メートルに達する。葉は三角状卵形で先がとがり、対生する。花は花冠がなく、筒状の萼(がく)に色がついてアサガオの花のように開く。花の基部には萼のようにみえる緑色の総包葉がある。園芸種には紅、白、桃、黄、絞りなどの花色があり、夏から秋にかけて咲き続ける。夕方から開花し、日中はしぼむのでfour-o'clock英名がつけられている。種子は黒く、割ると白粉質の胚乳(はいにゅう)がある。栽培は、春播(はるま)きにすれば夏には開花するので、一年草同様に扱う。暖地ならば塊根状の根が越冬し、翌年も生育、開花する。

[神田敬二 2021年2月17日]

 オシロイバナを最初に記載したのはフランス生まれのオランダの植物学者クラシウスCarolus Clusius(フランス名)(1526―1609)で、1576年ごろにペルー産としてアドミラビリス・ペルビアナAdmirabilis peruvianaの名を与えた。中国へは16世紀末までに渡り、日本へは元禄(げんろく)時代(1688~1704)に江戸に伝わった。貝原益軒(かいばらえきけん)の『花譜(かふ)』(1695)には赤花と黄花があがる。江戸時代、種子はおしろいの代用に、根は葯剌巴(やーらっぱ)の名で蘭薬(らんやく)に使われた。ブラジルでは全草を腹痛下痢、根を下痢や水腫(すいしゅ)の民間薬に利用する。

[湯浅浩史 2021年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オシロイバナ」の意味・わかりやすい解説

オシロイバナ(白粉花)
オシロイバナ
Mirabilis jalapa; fouro'clock

オシロイバナ科の多年草。寒さに弱く,冬季地上部分は枯れ,春新しい芽が出ることが多い。南アメリカ原産で,250年以上も前に日本に渡来したといわれる。緑色の茎は軟らかく,節がふくれている。長さ5~10cm,卵形の葉が対生する。夏から秋にかけて,赤,黄,白,絞りなどのらっぱ状の花を多数枝先につける。花弁のようにみえるのは萼で,花弁はない。花は夕方開き,翌朝にはしおれる。そのため夕化粧の別名もある。球形の果実は基部を萼に包まれ,黒く熟する。種子は硬く内部の胚乳部分は白い粉状でこれを白粉にたとえた。草花として庭や花壇などに植えられるが,また野生状態のものもある。遺伝学の研究に用いられたので有名である。

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