おとめ座のα(アルファ)星の固有名。スピカとはラテン語で「小麦の穂」の意で、正義の女神アストライアが左手に持つ小麦の穂の位置にあたる部分にある。アラビア名はアジメクAzimechで「守られていない」の意。実視等級は0.97等(変光している)、色指数(B-V)はマイナス0.23等(天体の色を表す指標の一つで、青色B等級から実視V等級を引いたもの)。春の夜空に青白く輝く恒星。2000年の天球上の位置は、赤経13時25分12秒、赤緯マイナス11度09.7分。毎年4月15日ごろ真夜中に南中する。視差は12.4ミリ秒角で、地球からの距離は262光年である。固有運動は53ミリ秒角/年、視線速度は1キロメートル/秒。スピカは公転周期4.01日の分光連星である。主星は、スペクトル型B1ⅤまたはⅢ~Ⅳで、質量は太陽の11倍、半径は太陽の7.8倍、表面温度は2万4500K(ケルビン)、自転速度vはv sin i=161キロメートル/秒(iは地球から見た星の自転軸傾斜角)。伴星はスペクトル型B2~4Ⅴで、質量は太陽の7倍、半径は太陽の4倍、表面温度は1万7000K、自転速度vはv sin i=70キロメートル/秒。連星の軌道傾斜角(地球から見た公転軸の傾き)は66度、軌道離心率は0.15、また周期128年で近星点移動をしている。主星は、星の形状が楕円(だえん)体でそれに伴う変光のほかに、ケフェウス座β(ベータ)星型の脈動変光が加わっている。線スペクトルの形も種々のモードの非動径振動(星が球形からずれて揺さぶられる振動)のため複雑に時間変化している。紫外線が観測されている。
[山崎篤磨]
『藤井旭著『春の星座』(1989・金の星社)』
おとめ座のα星。この名はラテン語で麦などの穂を意味する。おとめ座は,正義の女神アストライア,穀物神デメテルの娘ペルセフォネ,あるいはデメテル自身の姿に見立てられ,スピカは女神の手にした麦の穂の位置に輝いている。おそらく西欧古代において,この星の出没が麦その他の穀物の収穫期を認知するのに使われたと思われる。日本では同じ春の1等星の一つアークトゥルスに〈麦星〉の名があるが,この星の和名は広まっていない。一部の地方で〈しんじぼし〉(真珠星の意であろう)と呼ばれた。中国名は角。アークトゥルスの大角とともに巨大な竜の角に見立てている。おぼろげな春の宵に清楚(せいそ)な光を放つスピカは乙女のイメージにふさわしい。天文学上,この星はミザルの主星に次いで発見された分光連星として知られている。また,脈動変光星の仲間でもある。概略位置は赤経13h25m,赤緯-11°10′。午後9時の南中は5月下旬。実視等級は1.0等。B1型のスペクトルをもつ巨星で,半径は太陽の約5倍。距離は約142光年。
執筆者:茨木 孝雄
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…現在,秋分点はこの星座にある。α星スピカから北西にのびる大きなY字形の星列である。ギリシア神話では,大神ゼウスと女神テミスの間に生まれた正義の女神アストライアとか,穀物神デメテルの娘ペルセフォネとか,デメテル自身の姿に見たてており,スピカはその手に握る麦の穂先に相当する。…
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