日本大百科全書(ニッポニカ) 「オマキザル」の意味・わかりやすい解説
オマキザル
おまきざる / 尾巻猿
広義には哺乳(ほにゅう)綱霊長目オマキザル科に属する動物の総称で、狭義にはそのうちのオマキザル属をさす。
オマキザル科Cebidaeは、同じ中央・南アメリカにすむマーモセット科のサルとは、身体がより大きいこと、および鉤(かぎ)づめがないことで区別される。歯式は
で36本。11属に分かれる。ヨザルAotus、ティティCallicebus、リスザルSaimiriの3属はいずれも小形で、体重は1キログラム前後。オマキザルCebus、サキPithecia、ヒゲサキChiropotes、ウアカリCacajaoの4属はより大きく、体重は2~4キログラム。このうちオマキザルを除く3属は系統的に比較的近く、サキ亜科にまとめられることがある。ホエザルAlouatta、クモザルAteles、ウーリーモンキーLagothrix、ウーリークモザルBrachytelesの4属はもっとも大形で、体重は6~11キログラムに達する。この4属はともに尾の把握力が強く、尾だけでぶら下がることができる。
オマキザル科オマキザル属のサルは、キャプチンモンキーCapuchin monkeyあるいはカツラザルともいう。オマキザル科のなかでは中ぐらいの大きさで、体重1.1~3.3キログラム、頭胴長32~56センチメートル、体格はがっしりしている。尾は頭胴長とほぼ同長で、木の枝などに巻き付けることはできるがその把握力はクモザルやホエザルほど強くなく、尾だけでぶら下がることはできない。オマキザル属の分類はまだ混乱しているが、通常二つのグループに分ける。一つは、多数の亜種を含むが唯一種フサオマキザル(クロアタマオマキザルともいう)C. apellaにまとめられている。このグループは頭冠部前方に暗色の長い直立した毛が密に生え、この毛はしばしば二つの角(つの)のようにみえる房状をなしている。第二のグループは、頭にこのような房毛がなく、ノドジロオマキザルC. capucinus、シロガオオマキザルC. albifrons、ナキガオオマキザルC. nigrivittatusの3種を含む。オマキザル属は、中央アメリカからアルゼンチン北部まで非常に広く分布する。他のオマキザル科の多くは熱帯降雨林にのみ生息し、もっぱら樹上生活をするのに対し、この属のサルは熱帯降雨林以外のさまざまな植生環境にも生息し、地上で活動することもまれではない。オマキザル属のサルはバラエティーに富んだ食性を示し、他の新世界ザルが利用しないものも食物とする。たとえば、ヤシの実、トカゲ、カエル、鳥の雛(ひな)や卵なども食べる。オマキザルはいずれの種も、普通いわゆる複雄群タイプの集団で生活し、母系の社会構造をもつことが明らかにされている。これまでに知られる最大の集団は35頭である。
[西邨顕達]