オメガ航法(読み)おめがこうほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オメガ航法」の意味・わかりやすい解説

オメガ航法
おめがこうほう

時分割で送信されるVLF超長波)連続波の位相比較により、双曲線の形で常時位置の線が得られる中精度の全世界的測位方式。測位方式は、その利用範囲が全世界的で、常時使用でき、しかも精度が高いことが理想的である。この方式は、開発にあたったアメリカ海軍が最終的な実用航海援助システムとしての期待を込めて、ギリシア文字の最終字Ωにちなんで命名したといわれる。A局~H局の八つの送信局(A―ノルウェー、B―リベリア、C―ハワイ、D―ノース・ダコタ、E―レユニオン、F―アルゼンチン、G―オーストラリア、H―日本〈対馬(つしま)〉)と、船舶等に積まれた受信機よりなる。送信各局は三つの同じ周波数の電波を送信するが、定められた時間だけ順序に従って送信するので局の識別ができる。同時に2局が同じ周波数の電波を送信することはない。

 受信機では、位置の線を得るために選ばれた2局からの電波の受信位相を一時蓄え、あるいは、蓄えた1局の位相と他局からの直接受信位相を比較して位相差を測定する。

 位相差測定には10.2キロヘルツが用いられるので、基線(2局間を結ぶ直線)上のレーン幅は約8海里である。レーン幅とは、位相差ゼロの位置の線から、次の位相差ゼロになる隣の位置の線までの幅で、比較電波の半波長に等しい。推測位置の誤差が4海里以下ならばこれで十分であるが、低精度の場合や航空機用のレーン識別補助として他の二つの送信電波が用いられる。すなわち13.6キロヘルツと10.2キロヘルツとの差3.4キロヘルツ、および11.33キロヘルツと10.2キロヘルツとの差1.13キロヘルツで位相比較を行って、基線上それぞれ約24海里および約72海里のレーン幅でレーン識別ができるようになっている。位置決定にはオメガ海図、オメガ表が必要である。

 使用波長が超長波で、電離層の下部D層で反射しながら非常に遠くまで伝わるので、利用範囲が広く、水上艦船のほか航空機、潜水艦にも利用できるという特徴をもつ。しかし伝搬経路における電離層、海陸の分布等による伝搬速度の変化に対する補正がたいへんで、地域別、半月ごと、1時間置きの予測伝搬補正表が刊行されている。この補正を行っても安定した十分な精度の位置が得られるとは限らない点に問題がある。

[川本文彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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