改訂新版 世界大百科事典 「オモダカ」の意味・わかりやすい解説
オモダカ (沢瀉)
arrowhead
Sagittaria trifolia L.
水田や浅い池や水路にはえるオモダカ科の多年草。地下に走出枝を出し,その先に小さい球茎をつける。葉は根生する。幼植物の葉は線形で沈水性であるが,後にできる葉は長い柄があって直立し,水面より上に出る。葉身は基部が二つに裂けた矢じり形で,頂裂片は長さ7~15cm。8~10月に高さ20~80cmの直立する花茎を出し,3個ずつ花を輪生する。大きな花序では複輪生となる。花序の上部に雄花,下部に雌花をつける。萼片は3枚で緑色。花弁は3枚で白色,円形で径8~10mm。雄花には多数のおしべがあり,中心部に退化した心皮がある。雌花には多数の扁平な心皮がある。瘦果(そうか)は扁平な倒卵形で広い翼がある。アジアの温帯~熱帯に広く分布する。クワイはオモダカから育成された作物で中国の原産,日本でも水田に栽培されている。オモダカよりも大型で,花茎の高さ1mに達するものが多い。走出枝の先にできる球茎が大きく,径3~5cmになる。近縁のアギナシS.aginashi Makinoはオモダカによく似ている。走出枝をつくらず,葉柄の腋(わき)に多数の小球茎をつける。葉の幅はオモダカより狭いものが多いが,矢じり形裂片の先はとがらず,丸みがある。日本全土と朝鮮に分布する。ウリカワS.pygmaea Miq.は線形の沈水葉のみで,矢じり形の葉身はつけない。花序は小型で,上部に雄花を3個ずつ1~2段に輪生し,下部に1~2個の無柄の雌花をつける。東アジアに分布し,日本では東北地方南部以西の水田雑草として広く分布する。
ヘラオモダカAlisma canaliculatum A.Br.et Bouchéは花の構造からオモダカ属とは別属とされる。葉身が披針形(へら形)で裂けることがない。花序は大型で高さ40~130cmになり,3本ずつの枝を輪生し,枝はさらに3個ずつの小枝を輪生する。これを繰り返して小枝の先に数百個の花をつける。花は両性で小型,花弁は3枚で白色。心皮は三角形をした花床の上に1列に輪生する。東アジアからオーストラリアにかけて広く分布し,日本では全国の浅い池や水湿地に生育し,ときに水田雑草となる。ヘラオモダカに似て葉が少し広く楕円形になるサジオモダカA.plantago-aquatica L.var.orientale Samuels.も種としてはユーラシアからオーストラリアやアフリカまで広く分布する。この塊茎を漢方では沢瀉(たくしや)と呼び,デンプン,精油,アルカロイド性物質,脂肪油,コリン,トリテルペノイドを含む。利尿作用があり,他の生薬と配合して腎炎,泌尿器系統の結石症,血尿に用いられる。また持続的な血圧降下作用があり,動脈を拡張し,血流の抵抗を少なくして血流量を増加させ,同時に末梢血管を拡張して血圧降下を導く。血中コレステロール量も低下させる。
執筆者:山下 貴司+新田 あや
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報