デジタル大辞泉 「オリオン」の意味・読み・例文・類語
オリオン(Ōrīōn)
(Orion)
ギリシア神話の巨人にして美男の狩人。海神ポセイドンの子。キオス島の王オイノピオンOinopiōn(酒顔の意)の娘メロペMeropēに求婚したが,その粗暴なふるまいを憎んだ王は,巨人が酒に酔って眠りこけているあいだにその両眼をつぶし,彼を浜辺にうち棄てた。しかし太陽の昇る地点で目を陽光にさらすべしとの神託をうけたオリオンは,父神から水上を闊歩(かつぽ)する力を授かっていたので海を渡ってレムノス島へ行き,そこで鍛冶の神ヘファイストスの工人ケダリオンKēdaliōnを道案内に請い受け,彼に東方へ導かれて視力を回復した。その後,王に復讐すべく再びキオス島へ渡ったものの,島民が王を地下の穴倉にかくまったために仇討がかなわず,クレタ島で女神アルテミスと狩りをして暮らした。この先,彼の最期についてはさまざまの伝承がある。2人の仲を心配した兄神アポロンが妹のアルテミスをだまして,沖で遊泳中のオリオンを遠矢で殺させたとする説,オリオンがアルテミスを犯さんとしたため女神に射殺された,あるいは女神の放ったサソリに刺されて死んだとする説,さらには,オリオンは曙の女神エオスに恋人としてさらわれたが,それが他の神々の不興を招いたため,デロス島でアルテミスに射殺されたとする説等である。死後,彼は天に上げられて星となり,アトラスの七人娘プレイアデス(すばる)を追いかける一方,みずからはつねにさそり座の星から逃れようとしているという。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)が開発している有人宇宙船。2011年のスペースシャトルの引退後、国際宇宙ステーションや月および火星などへの有人輸送手段として開発が始まった。形状はアポロ計画の際の宇宙船に類似しているが、使い捨てではなく複数回の使用が想定されている。打ち上げ用ロケットは、デルタⅣヘビーHeavyで実験されているが、運用段階ではアレスⅠの予定である。オリオン本体の大きさは直径5メートル、与圧部分の体積は約20立方メートル、居住部分の体積は約9立方メートルである。本体の質量は約10トンで、機械船なども含めると約25トンになる。当初、NASAの次期有人月着陸計画であるコンステレーション計画での使用を前提に開発されていた。しかし、計画の中止に伴い、スペースシャトルの代替機として国際宇宙ステーションへの人員と物資の輸送に開発目標が変更された。その後、小惑星や火星への有人探査も視野に開発が続けられている。2014年12月には無人での初飛行を成功させ、2022年11月にはアルテミス計画(国際有人月探査計画)の1号機として、月周回軌道への無人試験飛行を成功させた。2024年にはアルテミス2号機として乗員4名による月楕円軌道への有人飛行を予定している。
[編集部 2023年10月18日]
ギリシア神話に登場する狩りの名人。海神ポセイドンとエウリアレの子とされているが、大地の女神ガイアから生まれたという伝承もある。オリオンの最初の妻シデは、女神ヘラと美を競ったため、冥界(めいかい)タルタロスへ投げ込まれた。妻を失ったオリオンは、のちにキオス島の王オイノピオンの娘メロペに求婚するが、野獣退治を条件に結婚を約束した王は、その約束を守るどころか、ディオニソス神の助力を得てオリオンを酔わせ、眠っている間にその目を突き刺して盲目にした。しかし彼は、神託に従ってヘファイストス神の鍛冶場(かじば)から少年をさらって肩に乗せ、太陽の昇る方向を目ざして進んで行き、やがてアポロンの放つ陽光を受けてふたたび視力を取り戻すことができた。彼は王に復讐(ふくしゅう)を果たすためキオス島へ引き返したが、王はヘファイストス神につくってもらった地下の部屋に逃げ込んだので、ついに復讐は果たせなかった。
のちにオリオンはアルテミス女神に仕えるが、あるとき情欲を抱いて彼女を犯そうとしたため、怒った女神が送った巨大なサソリに刺されて死んだ。またこれには曙(あけぼの)の女神エオスとオリオンが恋仲になったため、アルテミス女神が嫉妬(しっと)してサソリを差し向けたという異説もある。オリオンは死後星座となったが、オリオンを倒したサソリも同じく星座となったため、天上に昇ってもなおオリオン座は、さそり座から逃げ回っているといわれる。
[小川正広]
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(2020-3-17)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ギリシア神話で,ティタン神アトラスとプレイオネPlēionē(オケアノス〈大洋〉の娘)の7人の娘,アルキュオネAlkyonē,メロペMeropē,ケライノKelainō,エレクトラĒlektra,アステロペAsteropē,タユゲテTaygetē,マイアMaia(伝令神ヘルメスの母)の総称。彼女たちはその母とともにボイオティア地方の森の中で,狩人のオリオンに5年にわたって追われつづけたため,これを憐れんだゼウスが母娘も追手もともに天に上らせ,オリオンを犬を連れた狩人の星に,娘たちをそのオリオン星から逃れようとする7羽の鳩(古代ギリシア語でペレイアデスpeleiades)の星(和名は昴(すばる))に化したという。プレイアデスの名はのちにプトレマイオス2世(前3世紀)治下のアレクサンドリアに集まった多くの悲劇詩人のうち,リュコフロンらの特にすぐれた7人の称として用いられた。…
※「オリオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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